3月17日(現地時間)、「アニエスベー(agnès b.)」は、楽天ファッションウィーク東京にて、楽天による支援プロジェクト「by R」を通じて、2026年秋冬コレクションを発表した。約10年ぶりとなる今回の東京でのランウェイショーは、ブランド設立50周年を記念して2025年10月にパリで開催した2026年春夏コレクションのショーに続くものだ。
会場は東京中心部に位置するフランス大使館公邸。ファッションショーとして初めて開放されたこの空間は、フランスと日本の友好を象徴する格式と気品を湛え、ブランドの世界観をより一層際立たせた。
アオイヤマダのパフォーマンスで幕を開ける
ショーの幕開けを飾ったのは、アニエスベーと長きにわたりコラボレーションを続けるダンサー、アオイヤマダによるパフォーマンス。ボーダー柄のジャケットとキャプリパンツを纏い、腕を大きく広げてランウェイを歩くその姿は、型にはまらない自由な精神そのものであった。アニエスベーが長年大切にしてきた、ストリートからインスパイアされた等身大の美学が、冒頭から鮮やかに宣言された瞬間だ。
春夏と秋冬、ふたつの季節が交差するコレクション
今回のショーは、2026年春夏コレクションと秋冬コレクションから選ばれた全52ルックで構成された。前半はリネンやコットンを中心とした軽やかなピース群。ナチュラルなベージュやオフホワイトのトーンが連なり、テーラードコートやリネンスーツ、サスペンダー付きのショーツといった、アニエスベーの定番アーカイブに新鮮な解釈が施された。刺繍入りのブローチや編みかごバッグといった細部のディテールに、アニエス・トゥルブレ(Agnès Troublé)が長年育んできたフレンチカジュアルの流儀が滲む。



デニムのルックも存在感を放つ。フルレングスのオーバーオールにボーダーの長袖Tシャツを重ね、デニムジャケットを肩から落としたスタイリングは、フレンチカジュアルの王道でありながら、ボリュームとディテールに現代らしい遊び心が宿る。太めのシルエットに白いキャットアイサングラスを合わせた女性のルックは、コレクションの中でも特に目を引く一枚だ。メンズはインディゴのワイドデニムに筆致のアート風プリントのシャツを合わせ、無造作な力強さを漂わせる。
プリントとアートが語るブランドの物語
アニエスベーはファッションを通じてアートや写真との対話を続けてきたが、今コレクションでも、そのフィロソフィーがプリントに色濃く反映されていた。抽象的な筆致のアート風プリントを用いたオープンカラーシャツや、海景のグラフィックを落とし込んだニット、さらにはフォトモンタージュを施したスカートなど、布の上に物語が描かれる。夜の森を切り取ったような神秘的な写真プリントを用いたドレスは、プリントが衣服の一部ではなくアート作品であるかのような迫力を持っている。
黄緑から黄色へとにじむグラデーションを纏ったノースリーブのドレスは、サマーコレクションの中でも際立つ一枚。デジタルプリントの精密さと有機的な色のうねりが共存し、見る角度によって表情が変わる。



秋冬ルックへ:ウールとタータンが彩る後半
ショーの後半、秋冬コレクションへと移行すると、素材とカラーパレットが大きく転換する。ウールのジャケットにサスペンダースカート、白シャツにストライプのタイというクラシックな組み合わせや、深いネイビーのウールスーツセットアップなど、ブランドの根幹を成すフレンチ・クラシックの美意識が前面に出てくる。



中でも最もドラマティックなインパクトを放ったのが、赤いロイヤルタータンチェックを全身にまとったルックだ。女性用と男性用の両シルエットで登場し、ロングコートとテーパードパンツ、そしてテーラードジャケットとスリムパンツという異なるシルエットで提案された。パンクとトラディションが融合したアニエスベーらしい遊び心が、会場に小さな歓声を呼んだ。
スーツへの揺るぎない信頼
アニエスベーのコレクションにおいて、スーツは常に中心的な役割を担う。グレーのスリーピーススーツにネクタイを合わせたクラシカルな男性ルック、ネイビーのダブルブレステッドジャケットと白シャツのシャープな女性ルック、そして、ブランドロゴのテキストプリントが施された黒のセットアップ。いずれも、普遍的でありながらブランドのエスプリを帯びている。ノーカラーの黒いテーラードジャケットとワイドパンツというオール・ブラックのコーディネートは、ミニマルな強さを静かに主張した。


フィナーレ:光と夜のコントラスト
コレクションのクライマックスに向けて、トーンが一段と深みを増す。黒いパフスリーブのシャツにサテンのスカートを合わせた女性ルックは、華やかさと翳りを同居させる。
そしてフィナーレを飾ったのは、ゴールドのスパンコールで花柄を描いたジャケットに、クリームカラーのワイドパンツを合わせた輝くアンサンブル。ドレッシーでありながら気取りすぎない。そのバランスこそ、アニエスベーが50年にわたって磨き続けてきたものだ。


アニエスの言葉:日本への想い
今回の東京ショーに際し、アニエス・トゥルブレはこう語った。
「日本は、私にとってとても大切な存在です。細部へのこだわりや、クラフトマンシップ、美に対する繊細な感覚に、深く感銘を受けてきました。伝統とモダンが共存し、控えめでありながら力強いそのスタイルには、静かな美しさが感じられます。東京でショーを行うことは、これまで私たちを知らなかった新しい世代との出会い、想いを伝えられる大切な機会だと感じています。」
「見覚えのあるものと新しい驚きが共存するということ。街ですれ違うような、ごく普通の人々が私の世界を体現してくれます。ストリートは、私にとって大切なインスピレーション源なんです。」
ショーのサウンドトラックには、ブランドが1990年代からサポートしてきたフランスのバンド、エア(AIR)の代表曲「Sexy Boy」の特別なリミックスが使用された。来場者には、今回のために制作された限定ヴァイナルレコードが贈られ、そのジャケットは「by R」限定商品にも通じる桜カラーで彩られた。
アーカイブへの敬意と現代への眼差しを両立させながら、自由で等身大の美しさを提案し続けるアニエスベー。この東京ショーは、50年の歴史を持つブランドが次の世代へと語りかける、力強いメッセージの場となった。
アニエスベー 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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