アッキ(AKKI)、2026年秋冬コレクション: 「The Blue Iris」が語る、三つの故郷

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2月13日(現地時間)、ニューヨーク拠点のブランド、アッキ(AKKI)は、Wニューヨーク・ユニオンスクエア内「リビングルーム」にて、2026年秋冬コレクション「The Blue Iris」を発表した。会場には、インドネシア出身の作曲家・ピアニスト、ユーニケ・タンジル(Eunike Tanzil)によるライブ演奏と共に、歌川広重の「堀切の花菖蒲」から着想を得た青いアイリスが、デザイナー、アッキ・ザオ(Akki Zhao)の人生そのものとして咲き誇っていた。

種から花へ、記憶の航海

コレクションは「種から開花へ」という詩的な構造で語られた。冒頭を飾るFlower Girlは生命の始まりを象徴し、最終的にはHuman Vaseという彫刻的なシルエットへと昇華する。

この物語的展開は、ザオ自身が辿ってきた道のりそのものだ。日本で生まれ、中国で育ち、そして今、ニューヨークという「第三の故郷」で根を下ろすザオにとって、青いアイリスは単なる装飾ではなく、再生と記憶、そして儚い美の象徴なのである。

クラフトへの敬意は、コレクションの核心をなす。中国ブロケードとオープンシーム構造の大胆な組み合わせは、着用とともに変化するフレイドエッジを生み出し、時間の経過さえもデザインの一部として取り込む。この発想は、ヘリテージを単に保存するのではなく、現代の文脈で再解釈しようとする姿勢の表れだ。

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東洋の構築美、都会のフォルムへ

日本のプリーツ技法は、ザオの手によって新たな表情を獲得した。3cmボックスプリーツ、アコーディオンプリーツ、そして独自の「ダイヤモンド」プリーツが、ドレス、アウター、テーラードピースに展開される。彫刻的なS字形のシルエットは、陰陽思想に通じる二元性──東洋と西洋、過去と現在、柔らかさと構築性──を視覚化する試みだ。

コートやブレザーに見られるドロップバックカラーやオーバーサイズのベルトは、着物や帯の構造から着想を得ている。伝統的な東洋の構築性を、ニューヨークの都市的なフォルムへと昇華させる。その繊細なバランス感覚こそが、アッキの真骨頂だろう。

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ディテールに宿る物語

さらにアクセサリーや仕上げには、ヘリテージへの深い敬意が込められていた。翡翠、淡水パール、アンティークの中国磁器の花瓶から再利用されたポーセリンボタン、シルク結びのリボン、ブロケードの縁取り。ニットには日本の和紙糸を使用し、レザーグッズでは折り紙から着想を得た鶴型のハンドバッグが登場した。

カラーパレットは、コバルトブルーのアイリスを中心に、多層的なブルーが展開される。ダークブラウン、ソフトピンク、イエロープレイド、キルティングレッドが、広重の浮世絵に描かれた庭園の情景を現代に蘇らせる。

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クラフトの対話、異業種とのコラボレーション

なお、今回のコレクションは、クラフトの可能性を拡張する複数のコラボレーションでも注目を集めた。銀座のハイジュエリーメゾン、アキオ・モリ(AKIO MORI)がジュエリーサポートを担当。プーマ(PUMA)とのカスタマイズスニーカーには、日本の転写ビーズ、中国翡翠、淡水パール、ブロケードパッチが組み込まれ、スポーツウェアとハイファッションの境界を曖昧にした。

加えて、バング・アンド・オルフセン(Bang & Olufsen)は、日本のプリーツ生地と伝統装飾で再構築したH100ヘッドフォンを制作。さらに、長野県南木曽町の木工房ヤマイチロクロ(Yamaichi Rokuro)による木製のUFO花器が、空間演出に詩的なアクセントを添えた。

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新しい始まりへの祝福

2025年に東京へアトリエを移し、サプライチェーンを再構築したアッキ・ザオ。ニューヨーク ファッションウィークでのデビューコレクションとなった今回の発表は、彼女にとって新たな章の幕開けだ。ニューヨークのファッション工科大学(FIT)で学び、パートナーのジャスティン・リン(Justin Lin)とともにブランドを始動させたザオは、今、東洋と西洋、過去と未来を繋ぐ架け橋として、独自の視点を確立しつつある。

「The Blue Iris」は、デザイナー自身の記憶と、三つの故郷への愛が織りなす、繊細で力強いストーリーなのだ。

アッキ 2026年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。

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