3月16日(現地時間)、アンセム エー(ANTHEM A)は楽天ファッションウィーク東京にて、2026年秋冬コレクションを発表した。
設立5周年という節目のシーズンに、アンセム エーが掲げたテーマは「INNER UNIVERSE(インナー・ユニバース)」だ。デザイナーの鈴木麻莉子と吉田直は、自分という一人の人間の内面へと深く潜り込み、潜在意識の中に潜む感情や矛盾に向き合うことをコレクションの出発点とした。
日常では見過ごされがちな潜在意識の領域には、表と裏、光と影という二面性が常に隣接している。相反する感情や葛藤を否定するのではなく、それらを受け入れながら生きていく強さ。その精神を、服という表現へと昇華したのが今季のコレクションである。
会場の静寂を切り裂くように現れた冒頭のルックは、黒のウールコートに重厚なムートンスカーフを纏ったスタイル。ウエストをベルトで締めたシルエットは、どこか旅人を思わせる佇まいを帯びながら、内面に潜む複雑な感情を静かに示唆する。また、ダークブラウンのレザーコートは、バーントキャラメルカラーのムートンカラーを添えることで温もりを宿し、相反する要素が共存する今季のテーマを象徴していた。


素材と加工への徹底したこだわりは、アンセム エーというブランドの核にある。ハンドクラック加工を施したレザーのような表情を持つボアブルゾンや、MA-1とパーカをドッキングしたブルゾンには柔らかなカットソー素材が採用され、加工の重厚感と素材の軽やかさという対照的な要素が鮮やかなコントラストを生み出している。
この独特の風合いは、職人による高度な工程から誕生しているものだ。生地は1メートル四方に裁断され、ブランドのために独自配合された特殊染料をスプレーで吹き付ける。その後、高圧プレスと手作業によるクラック加工を施し、天日乾燥を経て仕上げられるという。こうした工程を経て生まれる表情は、ブランドと職人の共同作業によって初めて成立するのである。

ランダムに刻まれた針が歪んだストライプを描くニットプルオーバーも印象的な一着だった。特殊技法を実験的に取り入れたこのニットは、立体的なテクスチャーを持つ表面が特徴で、1着を編み上げるのに約11時間を要するという。バーントオレンジの色合いに走るクラックのような表情は、大地の裂け目を思わせる力強さを放っていた。

ブランドのシグネチャーアイテムである「NO-BRAINER PANTS」も引き続き登場した。
2021年から継続するこのパンツは、見た目は端正なスラックスでありながら、履き心地はイージーパンツというバランスを追求したアイテム。男女の垣根を越えて着用できる設計で、今季もアップデートされたディテールとともにコレクションの随所に現れた。

色彩表現にも、アンセム エーはためらいがない。鮮烈なフューシャピンクのモヘアカーディガン、オリーブイエローのビーガンファーブルゾン、ブライトグリーンのキルティングコート。暗闇のランウェイの中でこれらの色彩が浮かび上がるとき、服は単なる衣服を超え、言葉にならない感情を呼び起こす。
終盤に向かうにつれ、その高揚感はさらに深まっていく。オリーブのベルベットドレスにオフホワイトのフェザーボアスカーフを重ねた女性ルック、そしてゴールドのメタリックスカートにブラックシャツを合わせたフィナーレのスタイル。日常と非日常の境界を軽やかに越えていくその姿は、アンセム エーが提示するミクスチャー・スタイルの豊かさを体現していた。




アンセム エーの服作りの背景には、職人との密接な協働がある。ブランドの製作には約40名の職人が関わり、それぞれの技術や感情を交差させながら服が形作られていく。デザイナーたちは、そこに宿る多様な感情や手仕事の痕跡こそがブランドの本質であると語る。
2026-27年秋冬シーズンは、ブランドにとって新たな自己探求の物語の始まりでもある。今季は2部作の第1章として位置づけられ、「主観的に捉えた私」を描いたもの。続く2027年春夏シーズンでは「客観的に見た私」が描かれ、両者が重なることで、新たな自己と出会うストーリーが完成するという。
ランウェイに残されたのは、ひと言では表現できない余韻。それは、デザイナーの言葉に集約される。
「それぞれから湧き出る感情こそが、その人にとってのアンセムです。」
アンセム エー 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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