ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)2026年春夏:ルイーズ・トロッターが導く新章の幕開け

Bottega Veneta
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9月27日(現地時間、)ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)は、ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)によるデビューコレクションをミラノ ファッションウィークにて発表した。

2026年春夏は、実に15人もの新クリエイティブディレクターが登場する、かつてないほどの“混沌のシーズン”。しかし、その熱気の渦中でも最も大きな注目を集めたのは、ブランド60年の歴史において初めて女性がクリエイションを担うこととなったルイーズ・トロッターのボッテガ ヴェネタであった。2025年秋冬のニューヨーク ファッションウィークでカルバン クライン(Calvin Klein)の新ディレクターに就任したヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)が喝采を浴びたのも記憶に新しいが、今回のトロッターのデビューはそれを凌ぐ熱狂を巻き起こした。

また、縫い目のないレザーカットのバッグというユニークな形でゲストへ届けられたショーの招待状も話題を呼んだ。小さなレザーバッグには、メゾンの卓越したクラフトマンシップが凝縮されており、その独創的なデザインを私たちはソーシャルメディア上で繰り返し目にすることとなった。

 

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クラフトとモダニティの交差

ショーが始まると、前半にはブランドのDNAであるイントレチャートのアウター群が登場。漆黒の光沢を放つレザーコートは、従来の編み込み技術を彷彿とさせつつも、まるで蛇の鱗のような立体感を生み出す特殊な加工が施されていた。表面に光が当たると、幾何学的な模様が浮かび上がる。ショルダーは誇張気味に構築され、力強さとボリュームを感じさせる一方で、合わせられたホワイトフェザーのアクセントが軽やかなコントラストを添えていた。

一方、イントレチャートを応用したジャケットは、ウエストを絞ったフォルムとワイドパンツを組み合わせることで、クラシックとモダンのバランスを取った造形を提示。重厚感のあるレザー素材ながら、編み込みの立体的な質感が光を受けて揺らめき、静かなラグジュアリーに代わる“視覚と触覚で感じるラグジュアリー”を体現した。

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さらに、肩から滑り落ちるようなストラップのドレスや、内側の構造によって腰回りを優美に強調するデザインは、力強さと繊細さを同時に宿し、女性のしなやかさを鮮やかに映し出す。

定番のトレンチコートにも、クラシックなフォルムを土台にしながら、素材選びとディテールの解釈で現代性を付与することで、新たな息吹が吹き込まれていた。ベージュやグレーといったニュートラルな色調を基調としつつ、レザーや加工テキスタイルを用いており、重厚感とモダニティを共存させる。ベルトやラペルにはイントレチャートの編み込みを部分的に配し、ブランドのシグネチャーをさりげなく織り込んだ。

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再生ガラス繊維が生む幻想

コレクションの中で最も象徴的だったピースが、再生ガラス繊維を用いたニットやケープだろう。これらはファーを思わせる豊かな毛足を持ちながら、質感はあくまで人工的。光を浴びるとガラス片のようにきらめき、ランウェイの上で絶えず形と色を変えるかのように揺れ動く。

オレンジやレッドの鮮烈なトップスは炎のように燃え上がり、深いブルーやメタリックなトーンは水面に反射する光を思わせた。その幻想的な質感は羽根やフリンジの装飾とも共鳴し、従来の「静かなラグジュアリー」という枠組みを軽やかに飛び越え、観客の五感に訴えかけるものだった。

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アクセサリーに見る原点と革新

アクセサリーにおいてトロッターは、ブランドの原点に立ち返った。1980年の映画『アメリカン・ジゴロ』でローレン・ハットン(Lauren Hutton)が携えた「ローレン」クラッチを再解釈し、ランウェイにはサイズやカラーバリエーションを刷新した新作が次々と登場。ハットン本人も赤のクラッチを手に最前列に登場し、その存在感はデビューコレクションの象徴となった。

またフットウェアは、ポインテッドトゥのクロッグや極太のイントレチャートサンダルなど、彫刻的ともいえるフォルムのシューズがラインナップ。シルバーやナチュラルベージュのクロッグは建築的なラインを描き、クラシックな装いにモダンな緊張感をプラス。また、ホワイトのスリッポンシューズは、ボリュームのあるルックを軽やかに引き締め、鮮烈なレッドのフラットサンダルは、一歩ごとに視線を足元へと誘った。

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クラフトの緻密さ、大胆なシルエット、そして触覚を刺激する素材の選択。それらは「静けさ」から「存在感」へと舵を切るルイーズ・トロッターの明確な意思表明のように受け取れる。自身のキャリアで培った知見を余すことなく注ぎ込みつつ、トロッターはボッテガ ヴェネタに初めて女性的な感性と新たな息吹を宿したのだった。

ボッテガ ヴェネタ 2026年春夏コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。

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