3月9日(現地時間)、グラン・パレのガラス張りのヴォールト天井の下、ラッカー仕上げの原色のクレーンが虹のように乱立する中、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)はシャネル(CHANEL)の2026年秋冬コレクションを発表した。78ルックからなるこのショーは、ブレイジーにとって2作目のレディ・トゥ・ウェアコレクションであり、昨秋のデビューに続く待望の続章だ。
「ラ・コンヴェルサシオン パート2」:芋虫と蝶の哲学
コレクションのテーマは、ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)が遺した言葉に深く根ざしている。
「ファッションとは、芋虫でもあり蝶でもある。昼は芋虫のように、夜は蝶のように。芋虫ほど心地よいものはなく、蝶ほど愛のために生まれたものはない。這うドレスも、飛ぶドレスも必要だ。蝶は市場へは行かず、芋虫は舞踏会へは行かない。」
このメタファーに呼応するように、ブレイジーはショーノートにこう記した。
「シャネルはパラドックスだ。シャネルは機能であり、フィクションである。シャネルは理知的であり、官能的である。シャネルは昼であり、夜である。芋虫と蝶の間を、いつでも自由に選べる自由を体現している。私は、女性たちが自分自身であることを、なりたい自分であることを、ためらわずに表現できるキャンバスを創りたい。」
この物語を体現したサウンドトラックは、レディー・ガガ(Lady Gaga)のミレニアル世代の名曲「ジャスト・ダンス(Just Dance)」、カーボヴェルデのモルナ音楽。そしてドキュメンタリー映画『フォービドゥン・ラブ(Forbidden Love)』やミュージカル映画『リトル・ダンサー(Billy Elliot)』のボイスオーバーが複雑にリミックスされ、「変容」をめぐる重層的な問いを会場全体に響かせた。
スーツという名のキャンバス
前作でメゾンのブルジョワ的コードに真っ向から挑んだブレイジーは、今季よりリラックスした姿勢で、シャネルの歴史との対話を深めた。コレクションのコアに据えられたのは、シャネルを象徴するスーツである。ボクシーなシルエットのミドル丈スーツは、20種以上のバリエーションで登場。フリンジトリムのクリーム色のツイードから、ブロケードやアップリケのフローラルプリント、スパンコールをまとったパステルカラーのプレイドまで、その表情は豊かに変化した。




ガブリエル・シャネルが1920年代に打ち立てたラ・ギャルソンヌの精神も色濃く投影され、ボーイッシュなテーラリングとゆとりあるシルエットが通奏低音のように流れる。ラウンドカラーとブレスレットスリーブというフェミニンなジャケットのシルエットは、マスキュリンなワークシャツやブルゾンへと姿を変え、ブレイジー自身がカーテンコールで着用したハーフジップと同じ、気負いのないたたずまいを纏った。
素材においても自由な遊びが見られ、クラシックなブークレ・ツイードを超えて、ラメ、シリコン、ガーゼをあしらったリブニットや複雑なウィーブへと広がりを見せた。
また、スカートは単独でも活躍し、プリーツを施したドロップウエストのドレスに赤いレザーベルトを合わせたスタイルは、1920年代のシルエットに2020年代のヒップラインベルトを掛け合わせた、時代を超えたハイブリッドだ。パンツはほとんど姿を見せず、存在感あるアウターウェアに添える形でわずかに登場するにとどまった。


昼から夜へ:パピヨン・ド・ニュイの登場
コレクションが後半へと進むにつれ、昼の機能性から夜の官能性へとトーンが移行していく。「パピヨン・ド・ニュイ(夜の蝶)」と呼ばれるシルエットが現れ、流線形のコートや流れるようなドレスが、虹色のイリデッセンスをまとって夜の世界へと飛び立つ。ランウェイの終盤に連なったメタリックのハンドバッグとそれに合わせたヘアスタイルを纏った妖精のようなルックの連なりは、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)への温かいオマージュとも映った。



アイコンの再解釈:バッグとアクセサリー
また、今季のアクセサリーもブレイジーらしい知性と遊び心に満ちていた。フラップ バッグは美しい状態で登場し、前シーズンのワイヤーを通した意図的なエイジング加工とは対照的な方向性に。注目すべきはキルティングの「キャビア」バッグで、ガブリエル・シャネルのオリジナル2.55(1955年)のフラットチェーンストラップとマドモアゼル・ターンロック、そしてラガーフェルドの11.12(1983年)のCCクロージャーとリボン付きストラップという、メゾンの二つの時代を一つのバッグに共存させた、ブレイジーならではのブリコラージュだ。ミクロなザクロ型ミノーディエールから、大振りのプラッシュ フラップ バッグまで、あらゆるシーンに対応するラインナップが揃っていた。キルティング スエードが全体を支配し、マトラッセ パターンに新鮮な解釈をもたらした。
シューズでは、ツートーンのVヴァンプ パンプスが、今季はミュールとセカンドスキン キャップ トゥ ブーツとして再登場。テクスチャードフラワーを飾ったサンダルも加わり、ジュエリーにはパールとカメリアが散りばめられた。




フィナーレ:100年の時を超えて
78ルックのショーを締めくくったのは、スーパーモデルのアン・V(Anne V)が纏ったブラックのジャージードレス。ガブリエル・シャネルが100年前にデザインし、ファッションの歴史を塗り替えたリトル ブラック ドレスへのオマージュだ。
「ジャスト・ダンス」が鳴り響く中でのフィナーレは、会場の興奮を一点に凝縮し、ブレイジーが率いる新時代のシャネルへの期待と確信を、その場にいた全員が共有した瞬間となった。

その熱狂は会場の外にも広がっている。春の新作がブティックに届いた直後から完売アイテムが続出し、パリの路面店前には長蛇の列が連日できたという。芋虫が蝶へと変容するように、シャネルは今まさに、新たな姿へと羽ばたいている最中なのだ。
シャネル 2026年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
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