2月13日(現地時間)、クリスチャン コーワン(Christian Cowan)は、ニューヨーク ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクション「Before the Door Opens」を発表した。
今季コーワンが焦点を当てたのは、ランウェイの外側ではなく、むしろその直前の空間——ベッドルーム、ドレッシングルーム、鏡の前に立つパーソナルな瞬間だ。着替えるという行為は、単なる準備ではない。それは“自己を構築するプロセス”であり、他者に見せるためのパフォーマンスが生まれる場所でもある。
その思想は、ランジェリーやコルセット、バレットブラ、ガーターベルトといった本来“隠される”はずの構造体を大胆に露出させることで明確に提示された。アンティークレースや1950年代のオリジナルテキスタイル、伝統的なコルセット技法を用いながら、インナーウェアは主役へと昇格する。構造は装飾となり、制限はエンパワーメントへと転換される。



フラジャイルなグラマーと緊張のバランス
ランウェイ冒頭、アイボリーのスリップドレスは、繊細なレースとアシンメトリーなヘムで1920年代の退廃的なロマンティシズムを想起させた。一方で、ブラックスーツにファーをあしらったルックは、ミッドセンチュリーのスクリーンヒロインを彷彿とさせる強さと孤高を体現していた。
黒のストラップレスドレスに大胆なフリンジを重ねたルックは、動くたびに身体のラインを曖昧にしながらも、決してコントロールを失わない。レースのミニドレスから覗くガーターストッキング、透け感のあるメッシュドレス、そしてボディラインをなぞるチェーンメイルのようなシルバーのドレス。これらは挑発的でありながら、決して過剰ではなく、“選択された見せ方”である。



さらに、ブラックのシフォンが床を流れるように揺れるルック、チャイナボタンを思わせるディテールを配したジャカードジャケットと構築的なスカートの組み合わせが、親密さと構築性の対話を示す。
ランウェイの最後を飾ったシルバーの流れるようなドレスは、まるで鏡の前の“未完成の自分”がそのままランウェイに歩み出てきたかのよう。身体を包み込みながらも完全には固定しないフォルムは、変容の途中にある存在を象徴していた。


“ドアの前”という物語
コーワンは「ドアを出る直前の瞬間」に魅了されてきたと語る。
それは、自分がこれから“誰になるか”を決める瞬間。
留める、締める、外す、変わる——その一連の動作を彼は振付のように捉え、今季のコレクションに落とし込んだ。
ハイグラマーでありながらどこか皮肉と遊び心も漂う演出(Pizza Hutとのコラボレーションというニューヨークらしいユーモアも含めて)は、コーワンが単なるドラマティックなデザイナーではなく、都市文化そのものを織り込む語り手であることを示している。
クリスチャン コーワン 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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