コンテッサ ミルズ(Contessa Mills)の2026年秋冬コレクションは、問いかけから始まる。ファッションにおいて、感情は弱さなのか、それとも強さなのか。デザイナーは明確に後者を選んだ。タロットの「カップのクイーン」——感情的知性を力として体現するアルカナ——を起点に、ミルズは水という元素を通じて、デザインにおける直感の正当性を主張する。
プレゼンテーション会場に吊るされた波打つ白とグレーのファブリックは、水面の揺らぎを抽象化したものだ。その前に立つモデルたちが纏うのは、静謐でありながら、確かな主張を持つ服である。



嵐色に染まったタフタ、シェルボタン、刺繍された魚とカップのモチーフ——プレスリリースに記された要素の一部は、これらのルックには直接的には現れていない。しかし、それでいい。コレクション全体を通して、ミルズは一貫性よりも多様性を、説明よりも体験を選んだのだから。
「洋服はまず、フィットして機能することが大切。それが基礎です」というミルズの言葉は、ロマンティシズムに溺れない冷静さを示す。彼女のアプローチは、感情を優先しながらも、構築とフィット感という基盤を決して手放さない。波打つファブリックの背景と、その前に立つ服の構造的な強さとの対比が、この姿勢を雄弁に物語る。


今シーズン、ミルズのクラフツマンシップは明らかに新たな段階に達している。精緻なディテールワークを施したピースと、洗練されたベーシックが共存することで、コレクションは表現の幅を広げながらも、核となる美学を失っていない。これは拡大を目指すブランドにとって、極めて戦略的でありながら、誠実な進化だ。
カップのクイーンが手にする聖杯は、内なる世界を映す鏡でもある。ミルズは自らの直感を信じ、それをデザイン言語として確立した。このコレクションは、彼女が自身の言葉を完全に操る段階に到達したことを証明している。
感情を弱さとして隠すのではなく、強さとして纏う。それがコンテッサ・ミルズの新章だ。
コンテッサ ミルズ 2026年秋冬コレクションは、以下のギャラリーから。
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