ディオール(Dior)2026年秋冬:チュイルリー庭園に咲く、アンダーソンによる新たなワードローブ

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3月3日(現地時間)、 ディオール(Dior)は、パリ ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。

会場となったのは、パリ屈指の歴史的公園、チュイルリー庭園(Jardin des Tuileries)。クリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、閉じたテントではなく、庭園のバサン・オクトゴナル(噴水池)を取り囲むように設計されたガラス張りのパビリオンを選択した。

モデルたちは睡蓮が浮かぶ池の上に架けられたブリッジを渡り、そのままパビリオン外周へと続く白いランウェイを闊歩。池に漂う睡蓮は精巧な造花だったが、本物と見紛う完成度で、現実と虚構の境をなめらかに溶かす演出となった。

ゲストには、シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)やアニャ・テイラー=ジョイ(Anya Taylor-Joy)らが招待されたことも話題を集めた。

Courtesy of ADRIEN DIRAND
Courtesy of ADRIEN DIRAND

庭園という「劇場」

「パリではいつも旅行者のような目で街を見る」と語るアンダーソンにとって、チュイルリー庭園は着飾ることの原点を映す鏡だった。ショー前に公開されたベラ・フロイド(Bella Freud)との対話の中で彼は、プレジャーガーデンの概念について『人々がどこかへ行くために着飾るような場所』と表現している。

ラドクリフ・ホール(Radclyffe Hall)の小説『孤独の井戸(The Well of Loneliness)』(1928年)に加え、シャルル・ボードレール(Charles Baudelaire)の詩集『悪の華(Les Fleurs du Mal)』(1857年)からも着想を得た今回のコレクション。アンダーソン自身が「見ること、そして見られること(seeing and being seen)」とテーマを語ったように、公園を散策するという日常的な行為を、個人が自己を演出するパフォーマンスとして捉え直した、思想的な深みのある一作だ。ファッションがつねに社会的な言語であったことを、チュイルリー庭園という歴史的な舞台を通じて静かに思い起こさせる。

解放されたバー ジャケット

コレクションの核となったのは、ディオールのアイコニックなバー ジャケットの再解釈だ。グレーのクリンクル素材を用いたペプラム付きのカーディガン仕立てとして登場したファーストルックは、スカラップレースが幾重にも重なるボリューミーなチュチュ型スカートと組み合わされ、春の陽光の中で軽やかに風をはらんだ。

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アンダーソンはこのコレクションについて「構造を全て取り除いた。軽くしたんだ」と言葉を選んだ。その言葉通り、バー ジャケットはコルセットの記憶を手放し、体に沿うのではなく、体とともに動く衣服へと生まれ変わる。

素材もまた多彩で、メンズウェアで先行して試みたベネチアン ジャカードの特注織り、アンティーク感漂うレース、意表を突く刺繍デニムと、一つの型の中に異なる物語が宿った。ペプラムとミニスカートを軸にしたガーリーなルックが並ぶ一方で、ゆったりとしたチェックのアウターや、テーラードをあえてデニムパンツへ落とし込んだルックも顔を見せ、「ディオールを着る人」の像を一つに絞らないアンダーソンの意志が伝わってきた。

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植物学的なファンタジー:睡蓮と花々

コレクション全体を貫くモチーフは「睡蓮」。アンダーソンは、モネの「睡蓮」連作を常設展示するミュゼ・ド・ロランジュリー(Musée de l’Orangerie)が、この日の会場であるチュイルリー庭園の一角にあることにも意味を見出した。

睡蓮は大ぶりのブローチとして服に宿り、黄色いセンターとフラッターするピンクのメタルペタルを持つアクセサリーとして登場。フットウェアでは、グリーンのヒールに睡蓮を象ったモチーフが取り付けられたサンダルや、白地に黒の水玉模様をあしらったシューズが印象的だった。

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バッグのラインナップでも、アンダーソンらしい遊び心が全開となった。グリーンのベルベットにゴールドのハードウェアを組み合わせたカエルを模したクラッチバッグや、キラキラとしたテクスチャーのピーナッツ型ミニバッグなど、思わず手に取りたくなる新作が揃った。

ディオールのクラシックなバッグシルエットを植物学的なアップデートで刷新したスタイルも並び、メゾンのクラフトマンシップとアンダーソンの軽やかなユーモアが共存した。

「重」と「軽」の間で

ランウェイには重厚と軽快が、呼吸するように交互に現れる。カラーパレットは、霞がかったペールトーンと深みのある苔色を軸に構成。そこに虹色の光沢感を宿らせた素材、刺繍をあしらったデニム、メタリックなシーンを帯びたグレーのスーツ、精緻なパターンが施されたトラックパンツなどが絡み合い、「着飾る喜び」を軽さの中に宿らせた。どのルックにも、何か一つ「見つける楽しみ」が仕込まれていた。

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Courtesy of ADRIEN DIRAND

2度目となるディオールのウィメンズ コレクションで、アンダーソンは確かな自信とともに、自分のビジョンをより鮮明に提示した。チュイルリー庭園という「見ること、見られること」の舞台を借りながら、彼はディオールという偉大なメゾンを、歴史の記念碑としてではなく、今を生きる個人のワードローブとして再定義しようとしているのだ。

「これはデイウェア。ワードローブだ」という彼の言葉に、そのすべてが込められている。

ディオール 2026年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。

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