ディオール(Dior)、京都の東寺で2025年フォールコレクションを発表─日本文化との対話を再構築

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4月15日(現地時間)、ディオール(Dior)は京都の東寺という歴史的な地を舞台に、ブランドの美学と物語性を凝縮させた2025年フォールショーを開催した。東寺は、8世紀に建立された世界遺産であり、桜が満開を迎えた境内にて披露されたコレクションは、日本文化との深い対話を象徴する場となった。

ディオールと日本──1950年代から続く縁

メゾンと日本との関係は、1953年に「クリスチャン・ディオール(Christian Dior)」が来日し、日本で初めてオートクチュールコレクションを披露したことに始まる。同年には「ジャルダン・ジャポネ(Jardin Japonais)」という名のアンサンブルを発表。翌1954年には、京都の名門・龍村美術織物の生地を用いた作品「オウタマロ(Outamaro)」を制作し、日本文化との芸術的対話を深めていった。

今回のプレフォールコレクションでは、アーティスティックディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が、そうした歴史的な背景を再解釈し、京都の職人たちとの協業を通じて、文化と技術の融合を形にした。

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伝統技術の再解釈と現代的シルエット

同コレクションでは、日本の伝統工芸に深く根ざした技法が随所に光った。福田繊維染色研究所による蒸し染めは、夢の中の風景を描いたかのように柔らかで幻想的。田畑喜八(Tabata Kihachi)による友禅染は、繊細な桜のモチーフをシルクに舞わせ、装飾でありながらも「生きた表現」として存在していた。

ジャケットは折り紙のように構築され、シャツの大きなカフスが、着物風の織物ジャケットの袖口から覗く。構造と柔らかさが共存し、過去と現在が重なるデザインへと昇華された。これらのモチーフは、1950年代にディオール自身が開発した意匠に着想を得たものであり、古典的でありながら現代性を宿している。

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静けさの中の反骨 ─ディオールの新たな表情

ショーの多くは、ベージュやクリーム、ブラックといった静謐なカラーパレットで構成されていたが、そこに突如として現れるパリジャンのスピリットが印象的であった。オフショルダーのブラックニット、クロップド丈のボンバージャケット、身体を包み込むようなファーボレロなどが登場し、職人技に裏打ちされた構築的な世界観に軽やかな反骨を添えた。チャコールグレーのオーバーサイズデニムは、力の抜けたモダンさと都会的なエッジを加える役割を果たしていた。

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今回のショーにおける特筆すべき点は、フランスのオートクチュールの遺産と、日本のミニマリズムが、互いに主張しすぎることなく共存していたことである。そのバランスの上に成立した今回のコレクションは、東寺という静謐な空間と桜の美しさによって、より深い意味を持つ舞台となった。

桜の下で、ディオールが描く未来

この日、ショーのフロントロウには、アンナ・サワイ(Anna Sawai)、モニカ・バルバロ(Monica Barbaro)、リリー・ジェームズ(Lily James)、ソナム・カプール(Sonam Kapoor)、中谷美紀(Miki Nakatani)、ディーヴァ・カッセル(Deva Cassel)、プリティ・イェンデ(Pretty Yende)らが名を連ねた。パフォーマンスは華美な演出に頼ることなく、ただ桜の下で静かに、しかし確かに、時の流れと文化の重なりを表現していた。

ディオール(Dior)2025年フォールコレクションのすべてのルックは、以下のギャラリーから。

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