2月22日(現地時間)、アーデム(Erdem)は、ロンドン ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。
今季のタイトルは「The Imaginary Conversation」。ブランド設立20周年という節目に掲げられたテーマは、過去と現在、記憶と想像力のあいだに横たわる“対話”である。
アーデム・モラリオグル(Erdem Moralıoğlu)は「20年前、私はひとつの“想像上の対話”を始めました。それは独白ではなく、決してひとつの声でもありません。過去と現在、記憶と想像力、そして時代や国境を越えて響き合う女性たちの人生と遺産との、絶え間ない対話なのです」と語る。
さらに彼は続ける。
「彼女たちの声は過去を現在へと運び、そこから私たちは未来を築いていきます。対話は続いています。これはノスタルジアのためのショーではなく、継続についての物語です。」
同コレクションは、まさに、アーデムが20年間積み重ねてきた女性像の再読であり、同時にその更新なのだ。
継承と変容
会場となったクラシカルな建築空間に現れた最初のルックは、ブランドを象徴するフローラルジャカードのテーラードジャケットと、繊細な刺繍を散らしたアイシーブルーのスカート。構築的な襟元にはレースのラフがのぞき、ヴィクトリア朝的な気配を帯びながらも、ウエストをきゅっと結ぶサッシュが軽やかな動きを与える。歴史的参照は明確でありながら、シルエットはあくまで現代的である。

コレクション全体を通して印象的だったのは、“引用”ではなく“再文脈化”だ。デボ(Debo)、マリア・カラス(Maria Callas)、マダム・イヴォンド(Madame Yvonde)、ラドクリフ・ホール(Radclyffe Hall)といった女性たちの存在が、直接的な肖像ではなく、フォルムや装飾、テクスチャーを通して再構築される。
たとえば、ダブルブレストのグレーツイードコートには、黒い花のアップリケが大胆にあしらわれる。厳格さとロマンティシズムの共存。あるいは、ストラップレスのフローラルコルセットにデニム調のスカートを合わせ、ピンクのリボンをあしらったルックは、19世紀的なボリュームと1990年代的なストリート感覚を交差させる。
書物を起点とするリサーチは、ドレーピング、レイヤリング、パッチワークへと展開される。異なる時代の断片が、古い館の剥がれかけた壁紙のように重なり合い、めくれ上がる。そのプロセスこそが、“Imaginary Conversation”の実体である。




ボリュームの詩学
さらに、今季を象徴したのは、フェザーを贅沢に用いたコートやドレスである。オフホワイトのフェザードレスは、身体を包み込みながらも軽やかに揺れ、まるで空気をまとっているかのような質感を生む。マルチカラーのフェザーコートは、絵画的な色彩が滲むように重なり、衣服がキャンバスへと変貌する瞬間を提示した。


一方で、アーカイブへのオマージュも明確だ。2006年のブライダルガウンを再解釈したルックは、ギャザーを強調したボリュームスカートとして再登場。反抗的でありながら高揚感を宿すシルエットは、20年の時間を経たブランドの成熟を物語る。

対話は続く
コレクション終盤には、構築的なプリーツドレスや、異素材を大胆に組み合わせたアシンメトリックなガウンが登場した。
刺繍、タフタ、チュール、ニット。異なる語彙がひとつの文章となり、服そのものが“対話”の場となる。
それは過去を懐かしむためのショーではない。
過去と現在を往復しながら、未来へと接続するための鍵である。



アーデム 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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