2月25日(現地時間)、ミラノファッションウィークは、グッチ(Gucci)の2025年秋冬コレクションから華やかな1週間の幕を開けた。ショー会場の床と天井には、鏡のように映し出されたインターロッキングGが輝き、巨大な空間に幻想的な光の渦を作り出していた。
このコレクションが発表されたのは、クリエイティブディレクターのサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)の退任が報じられてからわずか3週間後。新たなリーダーの就任が未定の中、グッチのインターナルチームがクリエイションを担い、ブランドの世界観を再構築した。
プレスリリースには、「クラフト、味わい、文化の連続性——グッチは時間を超えて多くの”オーナー”と守護者を持つファッションハウスである。職人やアーティザン、クリエイティブ・ディレクターやデザイナー、コミュニケーター、そして顧客たち、それぞれが独自の歴史を織りなしている。」と記され、ショーの最後にはチーム全員が揃って挨拶をする場面が。アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)退任後にもデザインチームによるコレクションが披露されたが、今回もまた、ブランドの伝統を守りながら、新たな世代へとつなぐ試みがなされた。
伝統をベースに、進化するグッチのコード
グッチの2025年秋冬コレクションは、1960年代のジェットセット時代の華やかさと現代的な感性を融合させ、ノスタルジックでありながらモダンな美学を生み出した。
このコレクションの特徴的な要素は、センシュアルな魅力と構築的なデザインのコントラストにある。ランジェリーライクなディテールを、シャープなテーラリングと掛け合わせることで、洗練されたエレガンスを演出。レースの透け感のあるブラレットは、ペンシルスカートの端正なシルエットやボリュームたっぷりのファーコートと組み合わせられ、洗練されつつもほのかに挑発的なブルジョワジースタイルへと昇華された。


さらに、マイクロミニ丈のAラインのミニドレスは、ベースボールキャップの上にシルクのスカーフを結ぶスタイリングがなされることで、過去のエレガンスと現代のストリート感をシームレスに融合。また、パステルピンクのエナメルスカートスーツは、オーバーサイズかつボクシーなシルエットへとアップデートされ、クラシックな印象を新たな視点で再解釈されていた。マスタードカラーのPコートは、さらに大胆なオーバーサイズに仕立てられ、立体的なフォルムを強調することで、まるでヴィンテージドールが纏う服のような、レトロな雰囲気を漂わせた。



続くメンズルックでは、アウターウェアやストライプのダッフルコートが主役を務め、モノトーンのテーラードスーツを基調とした洗練されたレイヤリングが際立った。カーコートは、ツイードやビニール素材、パティナ加工されたアニマルプリントといった異素材で遊び心を表現。
さらに、グレーのスーツにはラベンダーカラーやピンクのインナーを差し色として取り入れることで、マスキュリンなスタイルに繊細なフェミニンさを添え、クラシックなフォルムに新たな表情をもたらした。


「次のグッチ」は誰が創るのか
2025年秋冬コレクションは、グッチの未来を見据えた戦略的な再始動とも言える。サバト・デ・サルノのコレクションが「商業主義に寄りすぎている」との批判を受けたのに対し、今回はメゾンのアーカイブに立ち返りつつ、それを現代的に昇華させた、より中立的なデザインアプローチが印象的だった。
デザインチームの手腕は確かに見事だ。しかし、今ファッション界が注目しているのは、グッチの次なるクリエイティブ・ディレクターが誰になるのか、そしてそのビジョンがブランドをどの方向へ導くのかという点にほかならない。
現時点で、グッチは正式な後任を発表していないが、ブランドの売上が低迷する中で、今後の戦略と新たなリーダーシップの決定は、ますます重要な意味を持つ。グッチは次にどこへ向かうのか——その答えが明らかになる瞬間を、ファッション界全体が固唾をのんで見守っている。
グッチ 2025年秋冬の全てのルックは、以下のギャラリーから。
グッチ 2025年秋冬ウィメンズコレクション
グッチ 2025年秋冬メンズコレクション
Copyright © 2025 Oui Speak Fashion. All rights reserved.