ラコステ(Lacoste)2026年秋冬:1923年の記憶が、モードへと昇華

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3月8日(現地時間)、ラコステ(LACOSTE)はパリ ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。

会場は、ローラン・ギャロスの象徴的なフィリップ・シャトリエ・コート。クリエイティブ・ディレクターのペラジア・コロトロス(Pelagia Kolotros)が選んだのは、ラコステというブランドの起源に直結する、ある歴史的な一場面だった。

Lacoste FW26 Empty set Key shot by Sai Stephane Ait Ouarab 2026 5

記憶という名のインスピレーション

1923年7月31日、ドーヴィルで開催されたデビスカップにて、若きルネ・ラコステ(René Lacoste)はスペインのトップ選手マヌエル・デ・ゴマール(Manuel de Gomar)と対戦した。豪雨により芝のコートは冠水し、観客たちは乾燥を早めるために新聞紙を投げ入れた。選手と観衆は傘を差し、トレンチコートやポンチョ、レインコート、ラバーブーツを身に纏いながら豪雨を耐え抜いた。試合は2日間に及んだが、最終的にラコステは4セットで勝利し、フランスを決勝へと導いた。この”雨に洗われた一戦”は、若きルネが世界王者への道を歩み始める契機となった。

コロトロスがこの出来事から汲み取ったのは、勝利の瞬間だけではない。それは、「緊張と静寂、準備と本番。待つ時間と、つかみ取る瞬間」——競技の熱狂ではなく、その”あいだ”に宿る美しさへと、彼女は視線を向けた。観客席で交わされる視線、雨宿りの身振り、濡れた空気をまとう衣服。スポーツが文化になる、その境界線。コレクションのタイトル「ウォッシュド・アウト・マッチ(WASHED OUT MATCH)」は、雨で中断された試合と、色が洗い流されたような色彩感覚の両義を宿している。

アウターウェアの新たな地平

今季のコレクションの中心はアウターウェアにある。ベージュのボリューミーなトレンチコートに始まり、バーガンディのレザーライクなポンチョポロ、テールコート仕立てのハイブリッドピースへと展開していく流れは、スポーツと気候、そして歴史が交差するコロトロスのビジョンを体現している。

防水性とテクニカル素材を軸に据えたこのコレクションでは、トレンチコートを基盤としながらもポンチョを”進化したポロ”として再解釈。ボンディング加工を施したテックウールが自然環境への盾となり、透明ナイロンのパデッドピースや、ウェット加工・リフレクティブ仕上げのボリュームあるアイテムが、官能的で柔らかなベルベットや、象徴的な「ルネ・ブレザー」のソフトテーラリングと重なり合い、鮮烈なコントラストを描く。

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マッキントッシュ(Mackintosh)とのルーツ・コラボレーション

さらに今季注目すべきは、スコットランドの老舗アウターウェアブランド、マッキントッシュ(Mackintosh)とのカプセルコレクションだ。1824年創業のマッキントッシュが守り続けてきた、19世紀から受け継がれるゴム引きコットンの技法、手作業による接着とテーピング。その徹底したクラフツマンシップは、天候とともに生きてきた歴史そのものである。

気候とパフォーマンスによって鍛えられた2つのヘリテージの対話から生まれたのは、ブランドのクラシックを刷新するキーシルエット。ポンチョポロ、レインプルーフのトラックスーツ、プリーツ入りトレンチスカート、ハイブリッドなトラックジャケットシャツ。伝統的なパターンはテクニカル素材で再構築され、アイコニックなケーブルニットは高機能ナイロンと共存する。マッキントッシュの技術は、完璧な機能性とラコステらしさを兼ね備えたアウターウェアへと昇華した。

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自然の力が生む色彩

ルックを追うと、コレクションが明確な色の旅を辿っていることがわかる。クールグレーやインク調のヘザー、濡れたメタルのようなダークトーンで始まり、バーガンディ、ラスティレッド、そして最終的にホワイトへと辿り着く。

その道筋は、曇天から雨、そして雨上がりへと移ろう空の色を想起させる。アガベグリーンは雨上がりの芝を思わせ、ラスティレッドはローラン・ギャロスのクレーコートの記憶を呼び覚ます。

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テック・ヘリテージという世界観

コロトロスがラコステに描くビジョン「テック・ヘリテージ」と呼ぶ世界観は、アスレチックとアーカイブ、パフォーマンスと詩情の間に立つ。風化したトロフィーピン、グランドスラムTシャツ、アイコニックなトラックスーツ、ストレッチブレスレット付きデジタルウォッチ。ファンカルチャーに根ざしたこれらのアイテムがコレクションの語彙を拡張する。

ランラン(Lenglen)バッグは今季、新たなプロポーションで再登場。アーバンスポーティなシルエットにシリコン製グリップハンドルを備え、ラケットカバーやテニスボール型クラッチはマッキントッシュのテクニカルファブリックで仕立てられる。

ジェンダーフルイドな要素を多分に含む「ネオテニス」ピースは、スポーツのエネルギーを宿しながらもそれに限定されない存在感を放ち、世界のどこにいても自然に馴染む、カバー力と魅力を両立するデザインとなっている。

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真のゲームとは

コレクションのクロージングを飾ったのは、純白の世界だった。真っ白なコート、白いトラックスーツ、ラコステのアーカイブグラフィックを纏う白いスウェット——霧の晴れた後の静けさのような、静謐な美しさ。

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「真のゲームとは、単なる対戦相手との戦いではない。それは常に、身体と自然との終わりなき対話の中にある。」

あの冠水したコートを後にした若きルネが理解したであろう真理は、100年の時を超え、2026年秋冬コレクションとして鮮やかに蘇った。

ラコステ 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。

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