マツフジ(MATSUFUJI)2026年秋冬:語られない日常に宿る「尊厳」をすくい上げて

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3月20日(現地時間)、マツフジ(MATSUFUJI)は楽天ファッションウィーク東京にて、2026年秋冬コレクションを発表した。

今季のタイトルは「DIGNITY」。フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキ(Aki Kaurismäki)による“労働者三部作”から着想を得たコレクションは、社会の中で見過ごされがちな人々の静かな日常と、その中に確かに存在する尊厳に目を向けたものだ。

華やかさや劇的な展開とは対極にある、淡々とした日々。それでも人は、誇りや希望を手放さずに生きている。その姿を、マツフジは過度な演出ではなく、あくまで服そのものの力で丁寧に描き出していた。

コレクションのベースとなるのはワークウェアだ。けれど、それは単なる引用ではない。ジャケットに施されたアクションプリーツや、身体の動きに寄り添う設計は、機能性を備えながらもどこか静かな品の良さを感じさせる。労働服のリアリティと、テーラリングの精緻さ。その間にある繊細なバランスが、このブランドらしい空気をつくり出している。

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素材の扱いにも、同じような奥行きがある。ウールやコットンといった堅牢な素材に、シルクやカシミアの柔らかさを重ねることで、外側と内側のコントラストを表現。

例えばジャンプスーツでは、ラフな質感の外側と、内に潜むエレガントなテキスタイルが対比され、ただの作業着には留まらない。

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レザーのワークジャケットも印象的だ。ヌバック加工によるマットな質感は、どこか使い込まれたような温度を帯びていて、まるで現場の空気をまとっているかのようだった。無機質ではなく、人の気配を感じさせる素材感。それがこのコレクションに、静かなリアリティを与えている。

カラーパレットはブラックやネイビー、ベージュといった落ち着いたトーンが中心。その中に差し込まれるホワイトが、ふと視線を引き寄せる。強く主張するわけではないが、確かにそこにある光のような存在であり、日常の中に潜む希望を象徴しているようにも感じられた。

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スタイリングもまた、過度に作り込まれていない。清掃員や労働者の装いを思わせるレイヤリングは、あくまで自然体で、どこか現実に根ざしている。その分、モデル一人ひとりがまるで実在する人物のように見えてくるのが印象的だった。

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マツフジが見つめたのは、特別ではない日常の中にある確かな価値である。服を通して、人が人として持つ尊厳をそっとすくい上げる。その誠実なまなざしが、見る者の心にじんわりと残るコレクションであった。

マツフジ 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。

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