2月11日(現地時間)、メルート トールゲン(Meruert Tolegen)は、ニューヨーク ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。今季は、ブランドが一貫して追求してきた彫刻的シルエットをさらに深化させると同時に、素材と身体の関係性をより詩的かつ緊張感のあるかたちで押し広げたシーズンである。
ダークウッドの重厚な空間を背景に佇むルックは、まるで時を止めた肖像画のような静謐さを湛える。ショーで演奏されたモーツァルト《ラクリモーサ》およびバッハ《パルティータ第2番 ニ短調》の脱構築的アレンジと呼応し、コレクションは視覚と音響の双方から“構築と解体”というテーマを浮かび上がらせた。
パニエの再解釈とダマスクの構築美
2026年秋冬を象徴するのは、緯糸織りのフローラル・ダマスク生地を用いた立体的フォルムである。ストラップレスのコルセットドレスやオフショルダーのドレスでは、パニエを想起させるボリュームがウエストから外側へと広がる。しかしそれは歴史的引用ではなく、空間を纏うための構築だ。
フロントのレースアップが縦の緊張感を生み、両サイドに膨らむシルエットが建築的ラインを形成。繊細な花柄と強い構造体の対比が、ロマンティシズムと現代性の間を揺らぐ。
同素材を用いたロングコートでは、より抑制された表現へと転じる。ウエストを絞り、直線的に落ちる丈感が静かな威厳を放つ。クラシカルなテーラリングの中に、微細な歪みが忍ばせられている。



ヘリンボーンと“モンキーファー”の対比
ウールのヘリンボーンは、今季のもう一つの軸である。グレーのロングコートでは、ウエスト部分にわずかな膨らみを持たせ、身体の輪郭を包み込む。伝統的素材を用いながらも、重心操作によって彫刻的立体へと昇華させている。
さらに強い印象を残したのが、シンセティックヘアを用いたブラックルックだ。“Monkey Fur”を模した人工素材は野性味を帯びながらも、コルセット構造との組み合わせによって抑制された緊張感を保つ。外側のボリュームと内側の構築がせめぎ合い、身体性への問いを投げかける。


ハンドニットと新素材カシミア
今季はハンドニットが顕著である。ブランドにとって新たな素材であるカシミアを導入し、シグネチャーであるアルパカやモヘアと並置。凹凸のある編地が装飾そのものとなり、柔らかさと構築性が同居する。
ピンクチェックのシャツに重ねたニットベストのルックでは、家庭的な温もりとシャープなパンツの対比が印象的だ。一方、ブラックのプリーツスカートとニットトップのルックは極めてミニマル。縦ラインが身体の軸を強調し、装飾を削ぎ落とすことでフォルムの純度を高める。


空間を纏うという思想
メルート トールゲンの2026年秋冬コレクションは、服で身体を飾るのではなく、身体の周りに空間そのものをつくり出すという発想から生まれた。パニエの膨らみ、ヘリンボーンの織り柄、シンセティックヘアの質感、手編みのニット。どれも存在感があるのに、やりすぎには見えない。静かなのに力強く、華やかなのに控えめ。服の構造と着る人の感情とのバランスをさらに洗練させ、まるで彫刻作品のように佇む服を完成させていた。
メルート トールゲン 2026年秋冬コレクションの全てのルックは、以下のギャラリーから。
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