2025年メットガラのテーマは「Superfine: Tailoring Black Style(華麗なるブラック・スタイル)」に

MET GALA 2025

10月9日(現地時間)、メトロポリタン美術館は、2025年春に開催されるコスチューム・インスティテュートの特別展およびメットガラのテーマを発表した。そのテーマは「Superfine: Tailoring Black Style(華麗なるブラック・スタイル)」であり、ブラック・ダンディズムの豊かな歴史とその深い文化的意義を探求するものである。本展は、アフリカ系ディアスポラにおけるファッションの影響と、そのアイデンティティ形成への重要な役割に焦点を当てる。

ブラック・ダンディズムの進化とその影響

コスチューム・インスティテュートがメンズウェアに特化するのは、2003年の「Bravehearts: Men in Skirts」以来の試みである。今回は、コロンビア大学アフリカーナ研究の教授であるモニカ・ミラー(Monica L. Miller)がゲストキュレーターとして参加し、学術的かつ文化的な視点を盛り込んだ展覧会となる予定だ。彼女の著書『Slaves to Fashion: Black Dandyism and the Styling of Black Diasporic Identity』は、ブラック・ダンディズムを単なるファッションの枠を超えた美学的、政治的概念として提示している。

DP 36851 002 JPG Original 300dpi
Livery, American, Courtesy Maryland Center for History and Culture, gift of Miss Constance Petre, 1946.3.3a-c. Photo © The Metropolitan Museum of Art Photo © The Metropolitan Museum of Art

ミラーはブラック・ダンディズムについて、「アイデンティティを再考し、自己を再構築するための重要な手段であり、特に奴隷制時代においては、誰が人間と見なされるかを問う挑戦であった」と語る。今回の展覧会では、ブラック・ダンディズムが「奴隷」から「自立した個人」へと変容し、現代のファッションシーンに多大な影響を与えるまでのプロセスが描かれるのである。

コスチューム・インスティテュートは、2020年のブラック・ライブズ・マター運動を契機に、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)デザイナーの作品を積極的に収蔵してきた。今回の展覧会では、その一部が展示されることになり、キュレーター・インチャージのアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)は、「この展覧会は、私たちのコレクションの多様化に向けた大きな一歩である」と強調している。また、彼はファッションを通じてあらゆる文化や背景の架け橋を作ることを目指していると語った。

12の異なるセクションによる展示構成

本展は、12の異なるセクションでブラック・ダンディズムの多面的な魅力を探る壮大な構成となっている。第一章「Ownership」では、19世紀の奴隷が身に着けた衣服を通じて、ファッションと権力、アイデンティティの複雑な関係性が浮かび上がる。「Jook」セクションでは、1940年代のズートスーツを取り上げ、音楽やダンス、快楽主義がファッションにどのように影響を与えたかを描く。そして「Cosmopolitanism」では、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)や故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が手掛けたルイ・ヴィトンのメンズウェアが展示され、グローバルな視点からブラック・ダンディズムが再定義される様子が紹介される。

Ensemble, Pharrell Williams (American, born 1973) for Louis Vuitton (French, founded 1854), spring/summer 2025 menswear; CourtesyCollection Louis Vuitton.Photo © The Metropolitan Museum of Art Photo © The Metropolitan Museum of Art
Ensemble, Pharrell Williams (American, born 1973) for Louis Vuitton (French, founded 1854), spring/summer 2025 menswear; Courtesy Collection Louis Vuitton. Photo © The Metropolitan Museum of Art Photo © The Metropolitan Museum of Art
Ensemble, Virgil Abloh (American, 1980–2021) for Louis Vuitton (French, founded 1854), fall/winter 2021 menswear; Courtesy Collection Louis Vuitton. Photo © The Metropolitan Museum of Art Photo © The Metropolitan Museum of Art
Ensemble, Virgil Abloh (American, 1980–2021) for Louis Vuitton (French, founded 1854), fall/winter 2021 menswear; Courtesy Collection Louis Vuitton. Photo © The Metropolitan Museum of Art Photo © The Metropolitan Museum of Art

現代アーティストとのコラボレーションによる展示制作

この展覧会は、現代アート界を代表するクリエイターたちの手で彩られている。アーティストのトルクワセ・ダイソン(Torkwase Dyson)はその大胆で空間を意識したアプローチで展示デザインを手掛け、彫刻家タンダ・フランシス(Tanda Francis)はアフリカンアートを彷彿とさせる特注のマネキンヘッドを制作。また、フォトグラファーのタイラー・ミッチェル(Tyler Mitchell)が撮影するカタログでは、視覚的な美しさと力強いメッセージが融合し、展覧会全体に一貫したアートディレクションが与えられている。

2025年のメットガラに華を添える豪華な共同ホストたち

2025年5月5日(月)に開催されるメットガラでは、ファッション界のアイコン、アナ・ウィンター(Anna Wintour)に加え、音楽・映画・スポーツ界を代表する豪華な顔ぶれが共同ホストを務める。ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)、コールマン・ドミンゴ(Colman Domingo)、F1界のスター、ルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)、そしてファッションと音楽をクロスオーバーするエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)が揃い、レブロン・ジェームズ(LeBron James)が名誉ホストとしてこの輝かしいイベントに華を添える。

さらに、特別展示「Superfine: Tailoring Black Style」は、ルイ・ヴィトン、インスタグラム(Instagram)、ホブソン/ルーカス・ファミリー財団(Hobson Lucas Family Foundation)などの協賛を受け、2025年5月10日(土)から10月26日(日)まで、メトロポリタン美術館で開催予定だ。この期間、ファッションの未来を彩るブラック・ダンディズムの歴史と進化が、訪れる者に新たな視点とインスピレーションをもたらすだろう。