ミチノ・パリが実現させた『上質なエレガンスと手の届くラグジュアリー』の魅力

美しい曲線、上品な佇まい、柔らかく優美な光沢、そしてきめ細かく滑らかな手触り。
デザイナー ヤス・ミチノ(Yasu Michino)の手がけるレザーバッグブランド、「ミチノ・パリ(Michino Paris)」は、その卓越性とエレガンスによって、世界中の愛好家たちを魅了している。

上質なレザーバックを毎日のライフスタイルに取り入れたいと願っている人は多いだろう。しかし、高級レザーグッズの世界において、エルメス(Hermes)やデルヴォー(Delvaux)などのメゾンでは、高価格帯という理由から、ごく一部の人達だけのものに制限されてしまいがちだ。

そんな人々の願望をカタチにしたのがミチノ・パリである。同ブランドは、最高級のレザー素材を贅沢に使用し、ラグジュアリーブランドの中では親しみやすい価格帯で、顧客に最高の製品を提供する(価格帯は約1,500ドル前後)。

ここ最近筆者は、ソーシャルメディアで同ブランドのバッグを持っている人々を頻繁に目にする様になった。ファッションインフルエンサー、ファッション業界の専門家、子育てに奮闘するママ層、プロフェッショナルとして働くキャリアウーマン、上質なアイテムを求めるファッションフォワードな人々までが魅了されているのだ。

この記事では、ミチノ・パリのバッグが多くの人々に愛される理由、そしてブランドの創立者であるヤス・ミチノがどのようにして同ブランドを生み出したのかについて、彼へのインタビューを通じて探求していく。

パリ在住日本人デザイナー ヤス・ミチノのクリエーションとルーツ

ヤス・ミチノは東京生まれのパリ在住日本人デザイナー。
生まれは日本だが、幼少期から父の仕事の関係で日本を離れ、中国や、香港など国際的な環境に身を置いてきたという背景がある。

ミチノ・パリの創立者、デザイナーのヤス・ミチノ氏 ©︎Michino Paris

ミチノがデザイナーを志す決心をした時、彼はわずか8歳だった。中国の北京で暮らしていたミチノは、家族旅行で初めてフランスを訪れ、パリで暮らす人々を見て、大きな衝撃を受けたという。

「子供ながらに目に映る色彩豊かなファッションに身を包むパリジャン達の姿を見て、素敵な洋服や、素敵な色を持ってる方はより人生を楽しんでる、ということを感じさせてくれたんです。同時に、僕もそういうルールや、そういうものを着たり、そういう場面に自分を持っていきたいと思い始め、その時のパリでの出来事がきっかけで直感的にデザイナーになろうと決心しました。」ミチノは、当時をそう振り返った。

当時8歳のミチノ氏。家族旅行で初めて訪れたパリにて ©︎Michino Paris

そうした幼い頃の決意を叶えるべく、ミチノはニューヨークへ渡り、ニューヨーク大学で美術史とフランス文学を専攻。その後、拠点をパリに移すと、スタジオ・ベルソー(Studio Bercot)でファッションデザインを専門的に学んだ。その後、バッグデザイナーとしてのキャリアをスタートさせると、「イヴ サンローラン(Yves Saint Laurent)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「デルヴォー(Delvaux)」や「ニナ リッチ(Nina Ricci)」など名だたるラグジュアリーメゾンでクリエイティブを担い、実績と信頼を積見上げて行った。

2014年、ミチノは自分の名を冠したブランド「ミチノ・パリ(Michino Paris)」を始動。
しかし、立ち上げ当時からスムーズな成功への階段が用意されていたわけではなく、最初の5年というのは、試行錯誤を繰り返しながら物作りと向き合う日々だったという。ミチノ曰く、それは遊び心がありすぎる作品だったり、一方でクラシックに傾倒し過ぎていて冒険が出来ていなかったりと、丁度良いバランスの調和を取る難しさだった。それが故、バイヤーや周りの人々の意見を取り入れ過ぎてしまい、自分が本当に形にしていきたい作品と、周りが求める作品にギャップが生まれ、迷いを感じたこともあったのだとか。

周囲からの意見と自身が思う良いと思うものを表現するバランスを10年かけて調律していき、デザイナーとしての紆余曲折を経験しながら、生まれたのがミチノ・パリのシグネチャーとして知られる事となった「ルテス」だった。

ミチノ・パリのシグネチャーとして知られる「ルテス」©︎Michino Paris

「ルテスは本当にバランスが取れているバッグだと思います。これまでは、多くの人の意見を取り入れ過ぎて、バランスが取れてない選び方をしてしまったり、自分の意志が強すぎて、他の人の声に耳を傾けられていないことがありましたが、ルテスはそうしたことも含めて総合的なバランスが取れた存在のカバンです。」

周囲の声を聞きながらも自分の意思を尊重し、自分の信じた道へ自信を持って進む。
このアイコニックなバッグには、デザイナー自身が経験してきた葛藤から得た揺るぎない自信と、現代を生き抜く自立した女性達の姿を重ね合わせ、そのアティテュードへの敬意が示されているのだ。

パリジャンのエレガンスと日本の侘び寂びの融合

「ルテス」という名称は、パリの古称「ルテティア」から着想を得て名付けられており、ブランドの拠点を構える街へのオマージュ的な意が込められている。
ミチノに「ルテスはどんなバッグか」について尋ねたとき、彼はそれを「パリジャンのよう」と表現した。エレガンスと洗練さを兼ね備えられているデザインには、パリの人達の美的センスとパラドックスな精神性が込められているという。

「パリジャンって凄く複雑な感覚を持っていて、”気にしてないけど気にしてます”、”見られたくないけど見せたい”とか、そういった矛盾が常にあるわけです。特にフランス人の”見せびらかしたくない”っていう感覚の中には、”だけどやっぱり少し見てもらいたい”っていうものがあり、”クラシックじゃないといけないわ”って言うけれど、”クラシックすぎたらつまらない”、”何かクラシックじゃないディテールを合わせないと”みたいな概念なんです。なので、一つの方に偏ってはいけないという感覚がパリジャンの求めているバランスだと思います。」

「そう考えると、ルテスはパリジャン的な要素が詰まっているバッグです。”開けててもいい、でも閉めておく” そんな感覚で持つことが出来る気まぐれさが、パリジャンの美的センスを反映させているんです。」

閉めていると全体的にかっちりした印象を与え、開けて持つと自由で気ままな雰囲気が生まれる。そんな二面性を兼ね備えたルテスのバッグだからこそ、どんな持ち手のスタイルにもしっくりとハマり、その日のムードを表現してくれる。まるで「もう一人の自分」の様な存在になり得るのかもしれない。

しかし、パリジャンらしさをコレクションに落とし込む中で、ミチノは自分の中にある日本人としてのルーツも自身のクリエイションに影響を与えていると話してくれた。20年以上パリを拠点に活動しているが、最近になり自分の日本人らしい感覚を一層感じるようになったのだという。

「幼い頃から僕は日本を離れ、外国に住んできてたので、自分はあんまり日本人っぽくないのではと思ってたんですが、最近になり自分の中の日本人っぽさを実感するようになりました。というもの、僕が美しいと感じるものは、シンプルさと奥深さが両立する日本の侘び寂びのような概念で、そうしたものへ惹かれる自分の美的感覚に日本人らしさを感じています。だからなのか、例えばバッグデザインする時にも、大きな金具をバッグの目の前に持っていくとか、そういうことはしたくないんです。」

「同時にそれぞれの国の文化の面白さにもクリエイションを通して、改めて気付かされることがあります。例えば、韓国人だったら韓国人の色の組み合わせ、イタリア人だったら、イタリア人なりの色の組み合わせだったりとか、育った環境や普段から目にしているものにセンスは影響されていると思うんです。なので、自分の中でスタンダードになっている色使いは、日本人の色のセンスに影響されていると思っています。」

こうしたミチノの言葉をそのまま反映させるように、ミチノ・パリのどのシリーズのバッグにも、日本特有の「侘び寂び」を感じられる様な、奥深いラグジュアリー感が漂っている。年代問わず、多くの日本人が好んできた「ミニマルな上品さ」「洗練されたクワイエットラグジュアリー」がキーワードとなり、より多くの人が愛着を持ち、重宝するバッグへとなっているのだろう。

どんなスタイルにも合うルテスは、重宝バッグの代名詞に。©︎Michino Paris

ミチノ・パリに宿るメイド・イン・フランスのサヴォアフェール

また、これらの特徴は、ミチノ・パリのバッグが製造される際に徹底される熟練の職人技や、ミチノが追求する「上質なもの」への強いこだわりにも、鮮明に反映されている。

例えば、ミチノ・パリの製品に使用されているグレインレザーは、フランスの名門のタナリー、レミキャリアから供給されているもの。レミキャリアは、エルメスなどの高級メゾンに信頼されており、ミチノが採用しているグレインレザーの『ラグーン(LAGUN)』は、エルメスの「トリヨンクレマンス」に並ぶ最高品質のレザーだ。このレザーの繊細で滑らかな質感だけでなく、美しいシボ(皮革の表面模様)、鮮やかな発色は、使い込むほどに持ち主の生活に馴染じみ、独自の深い味わいを出してくれる。

同時に、レミキャリアで実践されるレザー染めの技術にも、メイド・イン・フランスならではの比類ないサヴォアフェールが生きているという。ミチノ・パリのバッグはカラーバリエーションが豊富で、カラーごとにそれぞれの美しい発色と個性が感じられるが、それらを実現するためにタナリーではじっくりと時間をかけ丁寧な染めの工程が行われている。

同ブランドのブログによると、通常3週間程で行われる染め上げをレミキャリアでは3ヶ月掛けて丁寧に仕上げており、その為1日の生産数は最大300枚と限定される。最初に染料で十分に下染めしてから顔料を至極薄く塗り重ねているため、色落ちもしない。最終仕上げは、一枚一枚職人の手によって染め上げられることもあるという。
こうした緻密で丁寧な工程によって、スレや汚れにも強く耐久性がある、完璧な美しいレザーが誕生するのだという。

製品に採用されているのは最高品質のグレインレザー『ラグーン(LAGUN)』
フランスの名門のタナリー、レミキャリアを訪問するミチノ氏 ©︎Michino Paris

たくさんの想いを込めてもの作りと向き合うミチノの作品からは、デザイナーとしてのアイデンティティだけでなく、豊かな情熱と想像力が宿ったアーティストとしての魂も感じられる。

ミチノは今後、クラシックなデザインの枠を超え、これまでにないファンタジーなアプローチを模索していくビジョンについても語ってくれた。それは、色彩や素材の多様性を増やすだけでなく、デニムやバイカラーなどの様々なテキスタイルを取り入れたり、金具のカラーを変えてみたりという新たな試みだ。
ブランドの未来について語るミチノの生き生きとした表情から、ミチノ・パリの未来の創作には、多くの驚きと感動が待っているのが伝わってきた。

多彩なバッグコレクションとサイズ展開

現在、ミチノ・パリの大人気シリーズ、ルテスのサイズ展開はスモール、ミニ、ナノの3種類。ハンドバッグとしてもショルダーバッグとしても2Wayで使用出来、取り外し可能なショルダーストラップが付属されているので、実用性にも優れている。
その他にも、バケットバッグのオデオンシリーズ、トートバッグのヴォンドームシリーズなど、日々のシーンごとに使い分けが出来るシルエットの製品が揃っている。

ルテスは、スモール、ミニ、ナノの3サイズ展開
左:オデオンバッグ 右:ヴォンドームトートバッグ ©︎Michino Paris

10月20日(金)から23日(月)までの3日間、ミチノ・パリはブランド初となるポップアップを東京で開催する。会場で行われる受注会では、人気のルテスシリーズを始め、オデオン、エトワール、ヴァンドームなどの2024年春夏の新作コレクションを携えた全15色のカラーが並ぶ予定だ。
普段なかなかお目にかかれないミチノ・パリの逸品を、手に取って見ることが出来る、絶好のチャンスをお見逃しなく!

【ミチノ・パリ 東京ポップアップ/プレオーダー受注会の詳細】

日時:2023年10月20日(金)〜23日(月)午前10時〜午後6時迄
住所:東京渋谷区広尾 5丁目 19-6
予約開始時間:10月7日(土)日本時間 午後8時〜
予約方法:予約優先制

ミチノ・パリ(Michino Paris)公式サイト

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