2月22日(現地時間)、シモーネ ロシャ(Simone Rocha)は、ロンドン ファッションウィークにて、2026年秋冬コレクションを発表した。
会場は、ロンドン北部の丘の上に佇むアレクサンドラ・パレス・シアター。1872年に建設され、開業直後に焼失、再建を経て今日に至るという数奇な歴史を持つこの劇場は、ロシャが長年探求してきた“ロマンスと現実の交差”を象徴する舞台であった。
神話と現実の狭間で
今季は三つの明確な参照軸によって構成されている。第一幕は、ジャック・B・イェイツの《In Tír na nÓg》に着想を得たケルト神話の世界。若さと美の理想郷を思わせる、苔色やオリーブ、深いルビーといったアースリーなカラーパレットが印象的である。深いグリーンのサテンガウンは、重力を感じさせる分量感と、腰元で束ねられたドラマティックなボリュームが共存し、幻想に確かな質量を与えた。



第二幕では、ペリー・オグデンの写真集『Pony Kids』が導入され、ダブリン郊外に生きる若者たちのリアリティが差し込まれる。ここで登場したのは、ウールやナイロン、シアリングといった実用的な素材群。チャコールグレーのワイドトラウザーにフェイクファーをあしらったブラトップ、あるいは分厚いシアリングコートとスポーティなジップアップトップのレイヤリング。ロシャの少女像は、もはや守られる存在ではなく、自らの足で立つ存在へと変容している。


第三幕は、エリザベス&リリー・イェイツ姉妹が創設したクアラ・プレスへのオマージュ。刺繍やニードルワークの伝統は、レースの総刺繍ドレスや、リボンを縦横に編み上げた“モンスター・ボールガウン”へと昇華された。アイボリーのレースドレスには無数のリボンとメタルリングが絡み、繊細さと構造的緊張が同時に走る。



アディダスとの初コラボレーション
そして今季最大のトピックは、アディダス オリジナルスとの初のコラボレーションである。
赤のトラックジャケットとショーツ、パフスリーブに再解釈されたスポーツブルゾン、パールをあしらったポニースキンスニーカー。ブランドの象徴であるストライプは、ロマンティックなドレスの肩線へと移植され、神話的世界観を現代の都市へと引き戻す。
チュールとトレーナー、レースとナイロン。ロシャが10代の頃にヴィンテージのチュチュの下にアディダスを着ていたという記憶は、ここで完全に回収される。スポーツウェアは異物ではなく、彼女の美学の延長線上にあった必然である。



軽やかさと重量感のコントラスト
レース、チュール、シルク、サテン。一方で、分厚いアランニット、ダブルブレストのウールコート、ボンバージャケット。軽やかさと重量感が、互いを引き立て合う構成は今季も健在だ。ブラックのシアーなドレスに重厚なコートを重ねたルックは、透明と不透明、露出と防御の対話そのものだった。
“幻想と機能”というテーマは、決して抽象的なスローガンではない。衣服の素材、構造、そして身体との距離感を通じて、具体的に提示されている。




少女神話を更新し続けてきたシモーネ ロシャは、今季、より地に足のついた強度を獲得した。ロマンティシズムは依然として彼女の中心にある。しかしそれはもはや夢想ではなく、歴史と現実を踏まえたうえでの選択である。
シモーネ ロシャ 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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