1月25日(現地時間)、「シュタイン(ssstein)」は、パリ ファッションウィークにて、2026年秋冬 メンズ & ウィメンズコレクションを発表した。
今季のシュタインが描き出したのは、日常の中にひそむ感情の機微を、服というメディアを通して丁寧にすくい上げる試みである。創設者でありクリエイティブ・ディレクターを務める浅川喜一朗が着目したのは、自身の内面だけではなく、街で目にする他者の気配や、見慣れた風景に宿る想像上の感情だった。
「自分自身の感情だけでなく、目にする人々が抱いているであろう“想像上の感情”に心を向けることがあります。あるいは、ジェイミー・ホークスワースの風景写真に出会ったときの喜びや、東京のありふれた景色を改めて見つめ直すこと。そうしたシンプルな喜びや、ノスタルジーを帯びた温もりが、私に大きな安らぎを与えてくれるのです。」
この浅川の言葉が示す通り、コレクション全体を覆うのは、強い主張ではなく、安心感と郷愁が共存する穏やかな空気だ。強い主張や過剰な演出は排され、ランウェイに現れたのは、どこか人の生活の延長線上に存在しているような服の連なり。そこには、シュタインが一貫して大切にしてきた「服は人生に寄り添う存在である」という思想が、より明確なかたちで表れている。


色彩はグレーやブラウン、カーキ、オリーブといった落ち着いたトーンを基調に、赤やイエロー、グリーンが静かなアクセントとして差し込まれる。これらの色は、秋の落ち葉や夜の街灯に照らされた景色を想起させ、視覚的なインパクトよりも、記憶や感情に訴えかける役割を果たす。
素材への探究も、今季の大きな特徴だ。ソフトに織られたツイード、染色後に天日干しすることで生まれる不均一な色合いのコーデュロイ、わずかに起毛したアーガイルニット。いずれも均質さを避け、時間の経過や人の手の痕跡を感じさせる質感が選ばれている。服そのものが、ひとつの生活の断片であるかのようだ。




そして、コレクションを象徴するアイテムのひとつが、ラグランスリーブを備えたグレーのコートである。オフセンターに配された前立ては、浅川自身が「解体されたチェスターフィールド」と表現するように、クラシックな構造を踏まえながらも、わずかなズレによって新しい均衡を生み出している。シャトル織機でゆっくりと織られ、軽く縮絨されたフランネルは、空気を含んだような柔らかさを持ち、ブラッシング加工による控えめな光沢が、静かな品格を添える。
襟元にスエードやレザーを配した二重構造も印象的だ。リラックスしたシルエットに、わずかな緊張感を与えることで、全体のバランスが引き締められている。バルマカーンコートやブルゾンに共通するこの設計は、シュタインならではの構築と脱構築の感覚を象徴している。




スポーティなアイテムにおいても、ミニマルな見た目の奥に高度な技術が隠されている。ウールとカシミアを用いたブルゾンは、ダブルクロスの内側のみをすくい取る手縫いによって、着用時にステッチが表に現れない構造を実現。軽量の中綿を配したブルゾンや、テーラードとアーティスティックな要素を併せ持つトラックパンツも、実用性と美意識を高次元で両立させた。
デニムは、シュタインのシグネチャーであるアーチレッグをはじめ、再構築されたストレート、ワイドレッグへと展開。今季はロープ染色によって白い芯を残したカラーデニムが用いられ、履き込むことで奥行きのある表情が生まれる設計に。ニットウェアでは、カシミア、モヘア、ウールのインターシャに至るまでブラッシング技法が多用され、視覚的にも触覚的にも柔らかな印象を強めていた。

さらに今季は、全ルックがXSサイズから展開され、2WAY仕様のマキシスカートやタイトフィットのタンクトップといったフェミニンなピースも登場した。これは単なるサイズ展開の拡張ではなく、シュタインが今後見据えるウィメンズラインへの静かな予告として位置づけられるだろう。
声高に語ることなく、日常の感情や時間の痕跡を服に落とし込む──シュタインの2026年秋冬コレクションは、現代における「静かな強さ」を改めて提示した。
シュタイン 2026年秋冬コレクションの全てのルックは以下のギャラリーから。
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