レイバンのメーカー会社「エシロールルックスオティカ」が、シュプリーム(Supreme)を15億ドルの現金で買収

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7月17日(現地時間)、眼鏡業界のグローバルリーダーであるエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)が、VFコーポレーション(VF Corporation)傘下にあるファッションブランドのシュプリーム(Supreme)を、15億ドルで買収する正式契約を締結したことを発表した。

この買収により、シュプリームはエシロールルックスオティカの幅広いブランドポートフォリオに加わり、今後もブランドの独自性を維持しながらさらなる成長を遂げることが期待される。規制当局などの承認が下りる時期にもよるが、取引は今年中に完了見込みで、全額現金で支払われる予定だ。

エシロールルックスオティカの会長兼最高経営責任者(CEO)であるフランチェスコ・ミレリ(Francesco Milleri)と、副CEOのポール・デュ・サイヤント(Paul du Saillant)は、声明で次のように述べる。

「シュプリームのような象徴的なブランドを当社に迎えることで、素晴らしい機会が広がると見ています。これは当社のイノベーションおよび開発姿勢とも合致しており、新しいオーディエンス、言語、クリエイティビティとの直接的なつながりを提供するものです。シュプリーム独自のブランドアイデンティティや、D2Cおよび直営でのアプローチ、顧客体験は、当社の自社ブランドポートフォリオ内でも独自の空間を保ちながら、ほかの傘下ブランドを補完するでしょう。またシュプリームは、当グループの専門知識、能力、事業プラットフォームを活用するのに絶好な立場にあります。」

またVFの社長兼最高経営責任者であるブラッケン・ダレル(Bracken Darrell)は、「VFの下で、シュプリームは中国と韓国の主要市場での存在感を拡大し、強力な成長を再び遂げています」と述べ、「しかし、ブランドの独自のビジネスモデルとVFの統合モデルを考慮すると、戦略的ポートフォリオの見直しにより、シュプリームとVFの間には限られたシナジーしかないことが明らかになり、この売却が自然な次のステップとなりました。エシロールルックスオティカのポートフォリオにある他の著名なブランドとともに、シュプリームとその優秀なチームは、今後も成功を続けるための絶好の位置にあります」と続けた。

ダレルはさらに、「VFのポートフォリオは常に見直していきますが、この取引によりバランスシートの柔軟性が向上します。また、長期的な成長とより正常な債務水準を目指す全体的なプログラムを支援します」と付け加えた。

シュプリームの創設者であるジェームズ・ジェビア(James Jebbia)は、「エシロールルクソティカは、ブランドに忠実であり続け、過去30年間にわたって運営・成長してきた方法を維持することが最善であることを理解しているユニークなパートナーです。この移行により、ブランド、製品、顧客に焦点を当て、長期的な成功に向けた準備を整えることができます」と声明で述べた。

シュプリームの歴史と最近の動向

シュプリームは、1994年に米国、ニューヨークでジェームズ・ジェビアによって創業されたスケートボードショップおよびファッションブランドだ。これまで同ブランドは、限定版の衣料品やアクセサリーを定期的にリリースし、他のブランドとのコラボレーションを行うことで、若者から絶大な支持を得てきた。新作のリリース日には、店舗前に顧客の長い行列ができることも珍しくなかった。シュプリームは、2017年に米国投資ファンドのカーライル・グループ(The Carlyle Group)に株式の51%を5億ドルで売却し、2020年11月にはVFコーポレーションの傘下となった。

しかし近年、かつての勢いを失ったシュプリームは、売り上げも鈍化の一途を辿っていた。これは、高級志向のストリートファッションブランドが急増し、競争が激化し、市場が飽和状態に陥ったことが大きな要因である。また、この数年間、シュプリームのデザインには目新しい変化が見られず、同じようなブランドコンセプトが続いたため、消費者の関心が薄れてしまったことも一因である。

かつては新商品がリリースされると即完売していたシュプリームだが、それは転売マーケットで利益を狙うフリッパーたちのおかげだという声もある。実際、2023年春夏コレクションでは、オンラインストアに商品が何日も売れ残っている状況が見られた。

現在、シュプリームは、デジタルファーストのビジネスを展開しており、米国、アジア、ヨーロッパに17店舗を展開する。今回の同ブランドの売却は、VFの2025会計年度の1株当たり利益に対して希薄化効果をもたらすと予想されている。