7月17日(現地時間)、眼鏡業界のグローバルリーダーであるエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)が、VFコーポレーション(VF Corporation)傘下にあるファッションブランドのシュプリーム(Supreme)を、15億ドルで買収する正式契約を締結したことを発表した。
この買収により、シュプリームはエシロールルックスオティカの幅広いブランドポートフォリオに加わり、今後もブランドの独自性を維持しながらさらなる成長を遂げることが期待される。規制当局などの承認が下りる時期にもよるが、取引は今年中に完了見込みで、全額現金で支払われる予定だ。
エシロールルックスオティカの会長兼最高経営責任者(CEO)であるフランチェスコ・ミレリ(Francesco Milleri)と、副CEOのポール・デュ・サイヤント(Paul du Saillant)は、声明で次のように述べる。
「シュプリームのような象徴的なブランドを当社に迎えることで、素晴らしい機会が広がると見ています。これは当社のイノベーションおよび開発姿勢とも合致しており、新しいオーディエンス、言語、クリエイティビティとの直接的なつながりを提供するものです。シュプリーム独自のブランドアイデンティティや、D2Cおよび直営でのアプローチ、顧客体験は、当社の自社ブランドポートフォリオ内でも独自の空間を保ちながら、ほかの傘下ブランドを補完するでしょう。またシュプリームは、当グループの専門知識、能力、事業プラットフォームを活用するのに絶好な立場にあります。」
シュプリームは、1994年に米国、ニューヨークでジェームズ・ジェビアによって創業されたスケートボードショップおよびファッションブランドだ。これまで同ブランドは、限定版の衣料品やアクセサリーを定期的にリリースし、他のブランドとのコラボレーションを行うことで、若者から絶大な支持を得てきた。新作のリリース日には、店舗前に顧客の長い行列ができることも珍しくなかった。シュプリームは、2017年に米国投資ファンドのカーライル・グループ(The Carlyle Group)に株式の51%を5億ドルで売却し、2020年11月にはVFコーポレーションの傘下となった。
しかし近年、かつての勢いを失ったシュプリームは、売り上げも鈍化の一途を辿っていた。これは、高級志向のストリートファッションブランドが急増し、競争が激化し、市場が飽和状態に陥ったことが大きな要因である。また、この数年間、シュプリームのデザインには目新しい変化が見られず、同じようなブランドコンセプトが続いたため、消費者の関心が薄れてしまったことも一因である。
かつては新商品がリリースされると即完売していたシュプリームだが、それは転売マーケットで利益を狙うフリッパーたちのおかげだという声もある。実際、2023年春夏コレクションでは、オンラインストアに商品が何日も売れ残っている状況が見られた。
現在、シュプリームは、デジタルファーストのビジネスを展開しており、米国、アジア、ヨーロッパに17店舗を展開する。今回の同ブランドの売却は、VFの2025会計年度の1株当たり利益に対して希薄化効果をもたらすと予想されている。