高級バッグのマルベリー(Mulberry)、フレイザーズの買収提案を拒否:株式売却の意思なしと声明

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10月13日(現地時間)、英ラグジュアリーブランド、マルベリー(Mulberry)を展開するマルベリーグループ(Mulberry Group)の主要株主は、フレイザーズ・グループ(Frasers Group)による買収提案に対して、自社株を売却する意思がないことを声明で発表した。これは、フレイザーズの買収の試みを断念させる意図を示すものだ。

マルベリーは、英国発の高級レザーバッグブランドとして、アレクサ・チャン(Alexa Chung)やケイト・モス(Kate Moss)のようなファッションアイコンに愛され、2010年代に大きな注目を集めた。しかし、最近ではコストの増加や英国経済の低迷が響き、業績は下降線をたどっている。2024年度の通期収益は前年の1億5910万ポンドから1億5280万ポンドに減少し、純損失は前期の1320万ポンドの利益から353%減少し、3350万ポンドに転落した。

こうした流れを受け、9月27日にマルベリーは約1000万ポンドの資金調達をすべく、同社の56.1%の株式を所有するシンガポールの大株主チャリス・リミテッド(Challice Limited)が、新たに1000万株の新普通株式を1株あたり1ポンドで引き受けることを発表。さらに他の株主が新普通株式75万株を上限に、増資に参加できるオプションを提供した。

一方フレイザーズは、この発表から約24時間後に、同社が保有していないマルベリーの発行済および発行予定の全株式に対する買い付けを提案。現在フレイザーズはマルベリー株式における37%を保有しており、買い付け条件はマルベリー株式1株につき130ペンスに設定された。また、フレイザーズが保有していないマルベリーの発行済および発行予定の株式評価額は、約5240万ポンドと発表された。

しかし、マルベリーがこのオファーを「企業価値を過小評価している」として拒否。これに対し、フレイザーズは10月11日に買収提案の条件を引き上げたが、そのわずか2日後、大株主であるチャリスが再び声明を発表。

チャリスは、「現在、マルベリーを売却するのは適切なタイミングではなく、今回の買収提案が同社とその経営陣に与える混乱を非常に残念に思っています」とコメントを述べた。

さらに、「フレイザーズに対して、自社のマルベリー株を売却する意思はなく、買収提案に関していかなる不可撤回の約束やその他の取り決めを行う考えもありません。当社の立場を明確に示すことで、フレイザーズがマルベリーへの買収提案を撤回することを期待しています」と付け加えている。

英国の買収規則によると、フレイザーズは10月28日までにマルベリーに対して正式なオファーを行うか、買収を断念する必要があるようだ。