10月8日(現地時間)、ラグジュアリーコングロマリットのリシュモン(Richemont)は、上期決算を発表し、売上は安定を維持しながらも、利益が減少したことを明らかにした。特に、スペシャリストウォッチメーカー(Specialist Watchmakers)部門での中国市場の需要減退が響き、業績の足を引っ張る結果となった。
2024年9月末までの6ヶ月間でリシュモンの売上高は100.77億ユーロ、前年同期比で1%の減少を記録。営業利益は22.06億ユーロにとどまり、前年同期から17%減少した。これに伴い、営業利益率も前年の26.0%から21.9%に低下し、同社が直面している課題が浮き彫りとなった。
この減益の背景には、中国市場での高級時計需要の低迷がある。アジア太平洋地域全体の売上は19%減少し、中国市場の回復の遅れが影響した。特にスペシャリストウォッチメーカー部門は、前年同期比17%の売上減少を記録し、営業利益率は9.7%まで低下。リシュモンは、この市場における変動に対し慎重な運営を続ける姿勢である。
一方、同社は他の地域では堅調な成績を収めた。アメリカ市場は10%の売上増加、日本は32%の増加を示し、米国はリシュモンの最大市場としての地位をさらに強化した。これにより、各地域でのバランスが取れた売上構成が、グループ全体の安定に寄与している。
ジュエリーメゾン(Jewellery Maisons)部門では、カルティエ(Cartier)、ブチェラッティ(Buccellati)、ヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)といったブランドが引き続き堅調なパフォーマンスを見せ、売上は前年同期比で2%増加、営業利益率は32.9%を維持。直販チャネルの成長がこの部門の売上を支え、グループ全体の売上における直販の割合は76%に達した。
また、「その他」ビジネスエリアでは、アライア(Alaïa)とピーター・ミラー(Peter Millar)といったブランドが好調であったが、全体で5200万ユーロの営業損失を計上した。この損失の一因として、ファッション&アクセサリーメゾン(Fashion & Accessories Maisons)の一部ブランドでの低迷が挙げられる。
上期決算の主な成果としては、イタリアのジュエリーメゾンであるヴェルニエ(Vhernier)の買収完了、マイテレサ(Mytheresa)との株式交換契約締結、新CEOの任命、カルティエ(Cartier)とヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)の新しいリーダーシップ体制の確立がある。今後も不確実な市場環境が続く中、リシュモンは61億ユーロの安定した現金ポジションを背景に、長期的な成長を視野に入れて戦略を進める姿勢である。