11月14日(現地時間)、タペストリー(Tapestry, Inc.)社は、カプリ ホールディングス(Capri Holdings Limited)との合併契約を双方合意のもとで終了したことを発表した。タペストリー社はこの決定により、現在擁しているコーチ(COACH)、ケイト スペード(Kate Spade)、スチュアート ワイツマン(Stuart Weitzman)といったアイコニックな自社ブランドの成長戦略に一層の集中を図る意向である。
タペストリー社は、カプリ ホールディングスを85億ドルで買収することで、コーチ(Coach)やケイト スペード ニューヨーク(Kate Spade New York)、ヴェルサーチ(Versace)、ジミー チュウ(Jimmy Choo)、マイケル コース(Michael Kors)といったブランドを一つの帝国にまとめ上げ、LVMHやケリング(Kering)のようなヨーロッパのライバルに対抗する壮大な構想を描いていた。
しかし10月24日に連邦取引委員会(FTC)が、「今回の買収が市場競争を制限し、価格上昇のリスクをもたらす」と主張したことから、この買収計画に翳りが見え始めていた。タペストリー社はその後、即座に声明を発表し、「FTC(連邦取引委員会)の仮差し止め命令が認められたことは極めて遺憾であり、法的にも事実的にも誤った判断だ」と強調した。
今回の合併契約の終了は、こうした法的手続きの不確実性と締切日までに解決が困難と見込まれる状況を背景に、両社にとって最善の判断として決断されたものだ。
タペストリー社のCEOであるジョアン・クレヴォアゼラ(Joanne Crevoiserat)は、今後の戦略について「タペストリーは独自のブランド、柔軟なプラットフォーム、情熱的なチーム、堅実なキャッシュフローを備えた強力な地位を維持しています。今後も成長の大きな可能性があり、この時期において自社株が最も良い投資先であると確信しており、本日追加の株主還元プログラムを発表できることを嬉しく思います」と述べた。
また、同社のCFO兼COOであるスコット・ロー(Scott Roe)は、「タペストリーの株主価値向上への揺るぎないコミットメントは変わりません。当社の強力で安定したキャッシュフローは、ブランドとビジネスへの投資および配当プログラムの資金を支える基盤となっています。さらに、本日の20億ドルの追加株式買戻しの承認は、バランスシートの強さと柔軟性を示し、追加価値を創出する一方で、投資適格格付けを維持するという確固たるコミットメントも強調しています。当社は、長期的な有機的成長計画に強い自信を持っており、今後もすべてのステークホルダーに対して価値を提供し続ける機会があると確信しています」と語った。タペストリー社はキャッシュフローを活用し、株式買戻しや配当の増額といった株主還元を進める方針である。
同社の資本配分戦略は、ブランドおよびビジネスへの再投資、配当の維持、投資適格格付けの維持、余剰キャッシュフローによる株式買戻し、長期的な価値創造のための戦略的ポートフォリオ管理に重点を置いている。現段階で新たな買収の予定はなく、今後もコーチとケイト スペードの成長に注力する構えである。
今回の契約終了に伴い、同社は合併関連の債務である61億ドルのシニアノートを予定通り償還する方針だ。また、タペストリー社は今後の買戻し資金の一部を新たな債務発行で調達する見込みであり、長期的なレバレッジ目標を2.5倍以下に維持し、投資適格格付けを確保する意向である。
財務見通しについても、タペストリー社は2025年度の見通しを維持する方針であり、次回の決算発表時に最新の見通しを発表するとしている。