南フランスのラグジュアリーブランド、ジャックムス(Jacquemus)が、ニューヨークのソーホー旗艦店にオープン続き、ロンドンにも新たな旗艦店をオープンさせた。この新店舗はロンドンの中でも最も高級なショッピングストリートの一つであるメイフェア地区のニュー・ボンド・ストリート33番地に位置しており、以前リチャード・グリーン・ギャラリーが使用していたヴィクトリア朝ネオクラシカル様式の建物全体を占有している。
階層ごとに広がるブランドの世界
ロンドン新店舗のデザインは、ニューヨーク店やブランドのショールームを手掛けたレム・コールハース率いるOMA建築事務所が再び手掛け、ブランドの世界観を存分に体現した空間を作り上げた。約330平方メートルの広大な店内は、サイモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)のクリエイティブビジョンとブランドのエッセンスが息づく、芸術的な場となっている。
1階には洗練されたレザーグッズとアクセサリーが並び、2階にはウィメンズのプレタポルテコレクションがディスプレイされている。そして今回、ブランドとして初の試みとなるメンズウェア専用フロアを1階全体に設置し、ファッションの幅広い可能性をアピールしている。南仏プロヴァンスを思わせる手作業で仕上げられた白いスタッコ、地中海を彷彿とさせる不規則な形の自然石、さらに鍛鉄による南仏風ディテールが織り成す空間は、ミニマルでありながら温かみを感じさせるデザインが特徴だ。
特筆すべきは、VIP顧客に向けた特別な空間の存在である。最上階に設置されたプライベートサロンは、専用の入り口を通じてアクセス可能な、親密でラグジュアリーな空間だ。一人ひとりの顧客に合わせた特別な体験が提供されるこのサロンは、ブランドが掲げる「特別であり続ける」という哲学を象徴している。
さらに、この店舗はファッションとアートが見事に交わる場所でもある。約50点以上のアート作品やデザインオブジェが店内を彩り、訪れる人々に驚きと感動を与える。ヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffmann)のアームチェア、ラウル・デュフィ(Raoul Dufy)の繊細なヌード画、ウォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)の静物画、アスティエ・ド・ヴィラット(Astier de Villatte)の陶器などが並び、リチャード・グリーン・ギャラリー(Richard Green Gallery)からの貸与作品も加わることで、高級感と文化的価値が一層引き立てられている。
国際展開と次なる計画
ジャックムスはこれまで、ロンドン市場での反応を確かめるために一時的なポップアップストアを展開してきた。2022年にはセルフリッジズでプールをテーマにしたインスタレーションを開催し、2023年にはナイキとの提携によるジムをテーマにしたポップアップを実施した。こうした実験的なアプローチは成功を収めており、今回の旗艦店オープンに至ったと言える。
また、ブランドは現在、資本の一部を提供する投資家を探しており、2025年と2026年に計画されている新店舗オープンを加速させることを目指している。2025年2月にはロサンゼルスでの旗艦店オープンが予定され、さらにアジアやヨーロッパ市場への進出も視野に入れているようだ。また、美容カテゴリーへの参入などの新たな展開も計画しており、ジャックムスのさらなる進化について今後も目が離せない。
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