ラグジュアリー業界の巨頭、ケリング(Kering SA)は、ミラノ、ニューヨーク、パリに点在する総額約40億ユーロ(42億ドル)相当の不動産資産を一元管理する新たな事業体に外部投資家を迎え入れる計画を進めている。この計画について米ブルームバーグが12月18日(現地時間)に報じたところによると、早ければ2025年初頭にも完了する見通しだ。
この動きは、同社の財務基盤強化を目的としており、負債削減を図る狙いがある。ケリングは近年、主要都市での不動産取得に積極的であり、2023年にはニューヨークで約10億ドル、ミラノで13億ユーロを投じて物件を購入。さらに、パリの名高いルー・ドゥ・カスティリオーヌ通りやアベニュー・モンテーニュに位置する一等地の物件も取得している。
同社の広報担当者は、「ケリングは、主要な不動産資産の一部をリファイナンスするために、専用の事業体に第三者投資家を迎えることを検討しています。グループはこの方向で大きな進展を遂げており、スピンオフやIPOといった他の選択肢は視野に入れていません」とコメント。しかし、イタリアの日刊紙「イル・ソーレ24オーレ」は、ケリングが新設する不動産会社の新規株式公開(IPO)を検討している可能性を報じている。
主力ブランドの苦戦と財務改善策への期待
ケリング(Kering)は、主力ブランド「グッチ(GUCCI)」の売上低迷が影響し、2024年上半期(1~6月)の決算で大幅な減収減益を記録した。売上高は前年同期比11%減の90億1800万ユーロ、営業利益は同42%減の15億8200万ユーロ、純利益は同49%減の8億7800万ユーロと厳しい結果となった。地域別では、日本市場は引き続き堅調であるものの、アジア太平洋地域(日本を除く)では業績が振るわず、全体的な業績低迷に繋がった。これは、中国市場の経済減速や消費者の嗜好変化が影響していると考えられる。
同社は2024年下半期の営業利益が前年同期比30%減となる見通しを発表しており、厳しい市場環境が続く中で不動産資産のリファイナンスが財務改善策として重要な役割を果たすとみられる。
とはいえ、ラグジュアリーブランドの再建は容易ではない。競争激化や消費者のニーズ変化の中でブランド価値を維持、向上するには、綿密な戦略と多大な投資が必要となるだろう。