スペイン発の成長戦略がフランスのオートクチュールを新たな時代へ
1月7日(現地時間)、スペインの大手テキスタイル企業であるソシエダ テキスタイル ロニア(Sociedad Textil Lonia: 以下、STL)が、フランスを代表するファッションブランド、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)を完全買収したことを発表した。プライベート契約による取引で、金額の詳細は明らかにされていないが、ラクロワの歴史的遺産と創造性を新たなオーナーのもとで展開する契機となる。
STLは声明で、「私たちは、このたび象徴的なフランスのファッションハウスであるクリスチャン・ラクロワがSTLに加わることを心より喜ばしく思います」と述べ、「その創設者の卓越した才能と、ファッション業界への貴重な貢献が最大限に発揮されるよう、全力を尽くしてまいります。また、異なる文化を見事に融合させる彼の洗練されたセンスと、クラフトやオートクチュールへの愛情を、私たちのプロジェクトに取り入れていきます」と続けた。
同社は、ラクロワの豊かなアーカイブとフランスのオートクチュールの伝統を手に入れることで、国際的な存在感をさらに強化し、グローバル市場での地位を一層確立するとしている。また、ラクロワのデザイン哲学とその文化的価値を単なるビジネス資産としてではなく、ブランドの核心として次世代に継承していく方針だ。
クリスチャン ラクロワの遺産:感情、創造性、美の融合
クリスチャン ラクロワは、1987年にLVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy – Louis Vuitton)の支援を受けて誕生した。その設立以来、クチュールを単なる服作りにとどまらず、感情、美、想像力を表現するアートの一形態として捉えてきた。彼の作品には、故郷アルルの豊かなプロヴァンス文化や地中海地域への深い愛情が息づき、アートや職人技への敬意が細部にまで込められている。
さらに、異なる文化を巧みに融合させる彼の才能、クラフトや演劇への深い愛情、そしてオートクチュールへの尽きない情熱――これらはすべて、クリスチャン ラクロワの作品に一貫して見られるテーマであり、ブランドを唯一無二の存在へと押し上げた要因である。マドンナ(Madonna)やユマ・サーマン(Uma Thurman)をはじめとする世界的な著名人たちを魅了したラクロワのコレクションは、プレタポルテ、香水、アクセサリーといった幅広い分野にまでその影響を拡大。その華やかさと洗練を備えたアイテムは、多くのモノブランドストアを通じて世界的な知名度を築き上げた。
しかし、2005年にはLVMHがクリスチャン ラクロワを米国のファリック・グループ (Falic Group)に売却。その後、2009年にはクリスチャン・ラクロワ本人がブランドを離れ、一時的にその存在感が薄れることとなった。一方でブランドは、現在までライセンス事業を中心に事業を展開し、新しいオーナーの下で成長を続けてきた。
なお、1997年に設立されたSTLは、アクセサリーやプレタポルテのデザイン、製造、販売を一貫して手掛ける垂直統合型の企業だ。同社は、これまでにプリフィカシオン ガルシア(Purificación García)やCHキャロライナ ヘレラ(CH Carolina Herrera)といったブランドを成功させ、国際的な影響力を確立してきた。現在、STLは43か国にわたり600店舗以上のネットワークを展開している。