Y/プロジェクト(Y/Project)、売却先が見つからずブランド終了へ

Y/Project

1月9日(現地時間)、独創的なデザインで知られるパリのファッションブランド、Y/プロジェクト(Y/Project)は、14年の歴史の幕を閉じ、ブランドを正式に終了することを発表した。

創業者の喪失で経営困難に

2010年、ジャイルズ・エレイルフ(Gilles Elalouf)とヨハン・セルファティ(Yohan Serfaty)によって設立されたY/プロジェクトは、アバンギャルドなデザインとジェンダーレスな美学で注目を集めた。しかし、2013年に創業者セルファティの早逝に続き、2024年6月の共同創設者エレイルフの他界によって、ブランドは経営の舵取りにさらなる困難を迎えた。エレイルフの死後、筆頭株式は彼の家族に引き継がれたが、財務問題を抱える中での転換期となった。

2023年、同ブランドの収益は1,100万ユーロを記録。だが、2024年9月に破産手続きに入り、買い手を見つけることができなかった。同年、Y/プロジェクトは債権者への支払いを停止し、ブランド運営を維持することが不可能となっていた。

クリエイティブディレクターの功績と閉鎖の影響

2013年から、クリエイティブディレクターを務めたベルギー人デザイナー、グレン・マーティンス( Glenn Martens)のもと、Y/プロジェクトはラグジュアリーファッション界で確固たる地位を築いてきた。マーティンスは創業者セルファティの美学を尊重しつつ、自身の実験的なデザインでブランドを再解釈。2017年にはフランスの名誉あるANDAMグランプリを受賞、2016年にはLVMHプライズのファイナリストに選ばれるなど、業界内外で高い評価を受けた。

しかし、マーティンスが2024年にブランドを退任した後、買収の申し出は香港の資産管理会社「AA Investments」からの1件に留まり、具体的な合意には至らなかった。これにより、24名の従業員が職を失う結果となった。

独立系ブランドの苦境

独立系ブランドがラグジュアリーマーケットで生き残ることが困難を極める現代、この閉鎖は業界の根本的な問題を浮き彫りにする。消費者の嗜好の変化、供給網の課題、大手コングロマリットの市場支配——こうした波の中で、独立系ブランドが未来を切り拓くには何が必要なのか。同ブランドの終焉はその問いを突きつけている。

Y/プロジェクトの声明は、以下のように締めくくられた。

「14年間の実りある歴史を経て、Y/PROJECTは事業を終了するという難しい決断を下しました。Y/PROJECTおよびチームは、これまでブランドを支えてくださったすべてのパートナーとY/Pの支持者の皆様に心から感謝申し上げます。特に、グレン・マーティンス氏、パスカル・コンテ=ジョドラ氏、そして故ジャイルズ・エレイルフ氏には、チームに創造と成長の場を与えてくださったことに深く感謝いたします。」

なお、Y/プロジェクトは事業終了に際し、アーカイブ作品をニューヨークのメトロポリタン美術館やアントワープのモード博物館、パリのパレ・ガリエラなどに寄贈する計画を発表した。これは共同創業者エレイルフへの敬意を込めたものであり、同ブランドの創造的遺産を後世に伝える象徴的な試みである。

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