1月31日(現地時間)、キム・ジョーンズ(Kim Jones)がディオール・オム(Dior Homme)のアーティスティック・ディレクターを退任することが明らかになった。2018年の就任以来、メンズコレクションを牽引し、クラシックとモダンを融合させた独自のスタイルを築いてきたが、約7年の任期を経てメゾンを去る決断を下した。
7年間で築いたディオール・オムの新時代
ジョーンズのディオール オムにおける最後のショーは、先日開催された2025年秋メンズコレクションとなった。ショー終了後、彼はフランス最高位の勲章であるレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ(Chevalier de la Légion d’Honneur)を授与され、その功績が改めて称えられた。
彼が築いたのは、メゾンの伝統を受け継ぎながらも、新たな感性を吹き込んだ独自のメンズウェアの世界観である。そのクリエイションは、カウズ(Kaws)、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)、ショーン・ステューシー(Shawn Stussy)、ストーン アイランド(Stone Island)、イーライ・ラッセル・リネッツ(Eli Russell Linnetz)といったアーティストやブランドとの共同コレクションを通じて、ストリートカルチャーとラグジュアリーを結びつける革新的なアプローチを生み出した。
さらに、エジプト、ギザのピラミッド前でのプレフォールコレクション発表や、巨大ロボットや橋のレプリカを用いたショーセットなど、壮大な演出でファッションショーの新たな境地を開拓。ディオール オムを単なるラグジュアリーブランドではなく、カルチャーを牽引する存在へと押し上げた。
キャリアの軌跡:ルイ ヴィトン、フェンディ、そしてディオール
ジョーンズはディオール オムに就任する前、2011年から2018年までルイ ヴィトン(Louis Vuitton)のメンズ部門を率いて、機能性とラグジュアリーを融合させたコレクションで高い評価を得た。その後、2020年には故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の後継者として、フェンディ(Fendi)のウィメンズ・プレタポルテのアーティスティックディレクターに就任し、ブランド初のクチュールコレクションを手掛けるなど、新たな試みに挑戦してきた。しかし、2024年10月に突然のフェンディからの退任を発表。その際にはディオールに専念すると宣言をしていたが、今回そのディオールからも離れることとなった。
ディオールはジョーンズの退任に際し、声明で「メンズコレクションの国際的な発展を加速させ、クラシックかつコンテンポラリーな魅力を兼ね備えたインスピレーションあふれるワードローブを生み出しました」と発表。
また、クリスチャン ディオール クチュールのCEO、デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)は、「キム・ジョーンズ氏とそのスタジオ、アトリエの皆さんの素晴らしい仕事に深く感謝しています」と述べ、「彼はその才能と創造性をもって、ディオールの伝統を自由な発想で再解釈し、意外性に満ちた魅力的なアートコラボレーションを実現しました」とコメントした。
ジョーンズ自身も、ディオールでの経験について「ディオールという卓越性の象徴ともいえるメゾンでコレクションを創ることができたのは、私にとって大きな名誉でした。私の作品を形にしてくれたスタジオとアトリエの皆さんに、心から感謝します」と述べており、「コラボレーションを通じて出会ったアーティストや友人たちにも感謝の気持ちを伝えたい。最後に、全面的なサポートをしてくださったベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏とデルフィーヌ・アルノー氏に深い感謝を捧げます」と続けた。
注目される今後の動向
ジョーンズの退任を受け、ディオール オムの次期アーティスティックディレクターに関する正式な発表はまだない。一方で、ロエベ(Loewe)のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が就任する可能性が高いとの憶測が飛び交っている。
ディオール オムに新たな時代が訪れるなか、ジョーンズが次にどのメゾンへ向かうのか、ファッション界の注目が集まる。
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