フランスの名門百貨店プランタン(Printemps)が、2025年3月21日(現地時間)、ニューヨークのウォール街に初の米国旗艦店を華々しくオープンする。新店舗は、ブロードウェイ沿いのワン・ウォール・ストリート(One Wall Street)内に位置し、総売り場面積は約55,000平方フィート。そのうち40,000平方フィートが2フロアにわたる販売エリアとして展開され、ファッション、ホスピタリティ、グルメ、カルチャーが融合する洗練された体験型空間となる。160年の歴史と最新のトレンドが交差するこの新たな拠点で、プランタンはニューヨークのリテールシーンに新風を吹き込む。
「百貨店ではない」新時代のリテールモデル
プランタン・ニューヨークの最大の特徴は、従来の百貨店とは一線を画す、ブランドごとのショップインショップを設けない販売スタイル。すべての商品をプランタンが直接仕入れ、厳選したセレクションとして提供することで、流動的で創造性に富んだ売り場づくりを実現する。
CEOのジャン=マルク・ベライシュ(Jean-Marc Bellaiche)は、「我々は百貨店ではありません。ここは、ショッピングと食、体験、文化、そしてサービスが融合する場であり、フランスの洗練されたキュレーションとアメリカのホスピタリティが合わさった空間なのです」と語る。
また、「ニューヨーク市場には謙虚な気持ちで臨みます。非常に競争が激しい市場ですが、プランタンの提案は他のどの店舗とも異なるものです」と意気込みを見せる。
建築とデザイン:歴史的建造物の美を活かした空間
プランタン・ニューヨークの建築デザインは、著名なフランス人建築家ローラ・ゴンザレス(Laura Gonzalez)が手掛けた。彼女は、アールデコ様式とモダンなデザイン要素を融合させ、歴史的な建築美を活かしながらも現代的なエレガンスを追求した設計を施している。
「Printempsの歴史にインスピレーションを受け、モザイク、ステンドグラス、装飾パターン、オリジナルアートを取り入れました。しかし、これはニューヨークでの新しい物語。ここでは、すべてが可能です」とゴンザレスは語る。
特に、新店舗のアイコニックなエリアとなるのが「レッドルーム(Red Room)」だ。ここは、高さ33フィート(約10メートル)の天井を誇るアールデコ様式の空間で、1920年代にヒルドレス・ミーア(Hildreth Meière)が手掛けたモザイク装飾が壁一面に広がる。中央には円形のオニキス製テーブルが配置され、ディオール(Dior)、アクアズーラ(Aquazzura)、ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)といったラグジュアリーブランドのシューズが並ぶ、まさに芸術とファッションが融合した壮麗な空間と言えるだろう。
このエリアには、メンズ・ウィメンズのプレタポルテ(高級既製服)、カジュアルウェア、アウター、ヴィンテージ、アクティブウェア、アクセサリー、ビューティ、ウェルネス、ギフトといったカテゴリーの取り扱いがされ、以下のブランドを含む厳選された製品が並ぶ予定だ。
取り扱いブランド: JWアンダーソン(JW Anderson)、ジャックムス(Jacquemus)、ジャン ポール ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、マノロ ブラニク(Manolo Blahnik)、アクアズーラ(Aquazzura)、バレンシアガ(Balenciaga)、ナイキ(Nike)、アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)、シモーネ ロシャ(Simone Rocha)、カルヴェン(Carven)、ジル サンダー(Jil Sander)
ニューヨーク初上陸のブランド: ジョセフ デュクロ(Joseph Duclos)、ピネル&ピネル(Pinel & Pinel)、パスカル マチュー(Pascal Mathieu)、カプレット(Capulette)、メゾン エルネスト(Maison Ernest)、タレル マルモ(Taller Marmo)
売り場面積の3分の1を占めるダイニングエリア
プランタン・ニューヨークのもう一つの大きな特徴は、売り場面積の約3分の1を飲食スペースに充てている点だ。総合ディレクターには、「トップ・シェフ」ファイナリストであり、ジェームズ・ビアード賞を3回受賞したグレゴリー・グルデ(Gregory Gourdet)を起用。彼が手掛けるレストランとカフェには以下のものがある。
- Maison Passerelle:フランス料理の伝統に加え、ハイチ、西アフリカ、ベトナムなどフランスの旧植民地の影響を取り入れたユニークなメニューを提供
- Champagne Bar:シャンパンとノンアルコールカクテルを提供
- Café Jalu:終日営業のカジュアルカフェ
- Salon Vert:パリ風生ガキバー
- Red Room Bar:カクテルラウンジ
サステナビリティを意識した未来志向の店舗設計
環境配慮もプランタン・ニューヨークの重要なテーマの一つだ。顧客の大切なアイテムを修復・保存する「アトリエ&リペア(Atelier & Repair)」を導入し、使い捨てではなく、長く愛用できるファッションの価値を提供する。また、家具にはフランスの蚤の市で集めたヴィンテージ家具を採用し、ファッション業界の廃材を再利用した再生プラスチック製のテーブルトップを取り入れるなど、持続可能なデザインを追求している。
ニューヨーク市場への挑戦
プランタンにとって、今回の米国進出はまさに新たな挑戦だ。1984年にはコロラド州デンバー郊外にライセンス契約による店舗を展開したが、3年後に撤退。その苦い経験を経て、今回は単なる百貨店の枠を超え、ファッション、食、文化、体験が融合する新時代のリテール業態として、ニューヨークの小売業界に新たな革命を起こそうとしている。
近年、米国の百貨店業界は売上の低迷に直面し、従来の販売手法の見直しや改革を迫られている。そんな中、プランタン・ニューヨークの誕生は、単なる新規出店を超えた意義を持つ。歴史と革新を併せ持つこの空間が、ニューヨークのリテールシーンに新たな息吹を吹き込み、買い物の概念を再定義するだろう。多くの人々が3月21日のオープンを待ち望んでいる。
【プランタン・ニューヨーク】
公式サイト: https://us.printemps.com/

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