3月24日(現地時間)、LVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)は、スペインの名門ブランド、ロエベ(Loewe)の新クリエイティブディレクターにジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)のデザイナーデュオを任命したと発表した。就任は2025年4月7日付で、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の後任として、全ラインのクリエイティブを統括する。
新たなロエベを担う2人は、プロエンザ スクーラー(Proenza Schouler)の共同創業者として知られる存在。2002年、パーソンズ美術大学に在学中にブランドを設立し、卒業制作コレクションがバーニーズ・ニューヨーク(Barneys New York)に買い付けられたことで、瞬く間に業界の注目を集めた。ブランド名は、それぞれの母親の旧姓からインスピレーションを得たものだという。
プロエンザ スクーラーでは、アメリカンスポーツウェアの機能性と、ヨーロッパ的クチュールの洗練を融合させたコレクションで話題を呼び、時代のムードを捉えたモダンな表現が特徴だった。2008年に登場した「PS1」バッグは、“イットバッグ”として一世を風靡。さらに、現代アートや音楽、映画などカルチャー全般からの影響を巧みに織り交ぜ、唯一無二の世界観を築き上げてきた。
彼らは今年1月にプロエンザ スクーラーのクリエイティブディレクター職を退任しており、今後はロエベに完全に軸足を移す。現在もプロエンザ スクーラーの取締役としてブランド運営には関与しており、新たなクリエイティブリーダーの選定をCEOのシラ・スヴェイク・スナイダー(Shira Suveyke Snyder)と共に進めているところだ。
LVMHファッショングループの幹部であるシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)は、「彼らの多様性に富んだ創造性とクラフトへの情熱は、ロエベの新章を築く上でまさに理想的な選択です」と声明でコメント。
また、今回の就任に際して、マッカローとヘルナンデスは共同声明の中で次のように述べている。
「私たちが共感する価値観とミッションを持つロエベの一員になれることを心から光栄に思っています。ジョナサン・アンダーソンのもとで培われた素晴らしいチームと職人たちと共に働くことを楽しみにしています。」
一方、11年にわたりロエベを率いてきたジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、クラフトマンシップと現代アート、そしてカルチャーを横断する独自の美学によって、ブランドを世界の舞台へと押し上げた。ロエベはこの10年間で劇的な進化を遂げ、アンダーソン在任中には年商15億ドル超に達したと推定されている。アンダーソンは今後、同じくLVMH傘下のディオール(Dior)でのクリエイティブ職に就くと見られており、今回の発表はその布石とも受け止められている。
LVMHは現在、ロエベに限らずジバンシィ(Givenchy)、フェンディ(Fendi)、ディオール(Dior)など複数ブランドでクリエイティブ体制を見直しており、ポスト・パンデミックにおける成長の再加速を狙っている。一方で、主要市場である中国の景気減速や世界的な政治不安、インフレによる消費低迷など、外部環境は依然として不安定な状況が続く。
そのような不確実性の中にあっても、ロエベはクラフトへの揺るぎないこだわりと、国際的な展示・文化プロジェクトを通じて、業界内外から高い評価を得てきた。「ロエベ・クラフト賞」やミラノ・サローネでの展示はその象徴であり、グローバルな文化発信を担うブランドとしての立ち位置を確立している。
スペインの伝統、パリのラグジュアリー、そして世界中のカルチャー。新たな時代を担うアメリカ人デザイナー・デュオの手腕で、これらをいかに再構築していくのか。なお、彼らのコレクションデビュー時期は、現時点では発表されていない。
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