5月2日(現地時間)、アメリカ発のアパレルブランド「ヴィンス(Vince)」を展開するヴィンス・ホールディング(Vince Holding Corp.)は、2024年度第4四半期および通期の決算を発表した。卸売チャネルの堅調なパフォーマンスが全体を牽引し、粗利益率も大きく改善した一方で、直営店(DTC)チャネルでは苦戦が見られた。
卸売が売上を牽引、粗利益率は5ポイント改善
2024年11月〜2025年2月1日までを対象とした第4四半期の売上高は、前年同期比6.2%増の8,000万ドル。前年の第4四半期に存在した1週間の追加営業日(第53週)を除外すれば、実質的な売上成長率は約9%に達する。とりわけ卸売セグメントが好調で、26.7%増の3,910万ドルを記録した。一方、DTCチャネルの売上は8.1%減の4,080万ドルにとどまり、実店舗販売の弱さが浮き彫りとなる結果に。
また、粗利益は4,010万ドルで、粗利益率は前年同期の45.4%から50.1%へと、470ベーシスポイントの改善を見せた。これは、DTCチャネルでのプロモーション活動の削減や割引率の抑制、さらに製品および輸送コストの低下が寄与したことが原因である。
特別損失を除けば黒字転換、再建プランも進行中
営業損失は2,970万ドルと大きく赤字となったが、これは主に3,200万ドルの「のれん減損費用(Goodwill Impairment Charge)」によるものだ。これを除外した調整後営業利益は250万ドル。純損失は2,830万ドル(1株あたり▲2.24ドル)だったが、調整後の純利益は80万ドル(1株あたり0.06ドル)と黒字転換を果たしている。
現在、同社では2023年にCEOへ復帰したブレンダン・ホフマン(Brendan Hoffman)のもとで経営再建が進められている。ホフマンは声明で、「想定を上回る好調な年末の結果は、顧客に響き続けている高品質な製品群と、変革イニシアチブによる業務効率の向上が、チームの努力によって結実した証だと感じています」とコメントした。
また、2023年10月には、コスト構造を見直し、利益率改善を目的とした事業変革プログラムも始動。2024年度中に1,000万ドル以上のコスト削減効果を上げた。
通期では増収・増益も、成長は限定的
2024年度(2023年2月〜2025年2月1日)の通期売上は、前年比0.2%増の2億9,350万ドル。卸売が引き続き好調だった一方で、DTCの弱さが足を引っ張った。粗利益は1億4,520万ドル(粗利益率49.5%)と、前年の1億3,330万ドル(同45.5%)から大きく改善した。
純損益では1,900万ドルの赤字(1株あたり▲1.51ドル)となったが、調整後では240万ドルの黒字(1株あたり0.19ドル)を計上した。
今後は関税影響が鍵、成長戦略の柔軟な見直しも必要に
ヴィンスは現在、関税政策の不透明性に対応するため、生産拠点の分散やSKU数の最適化に取り組んでいる。中国における製造依存度を段階的に引き下げるとし、2025年秋の製品の約3分の1を中国以外の地域で生産する計画を示している。
また同社は、2023年にオーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group)と提携し、知的財産を譲渡する代わりに10年間の独占使用ライセンス契約を締結した。ライセンス契約の下で、ヴィンスは引き続き商品企画・製造・販売を担い、オーセンティックにはロイヤリティを支払う形式で運営されている。
なお、今後の第1四半期(2025年2月〜4月)について、CFOの奥村祐司(Yuji Okumura)は、卸売出荷の時期変更や直営店の閉鎖・移転が影響し、売上が前年比5%減、営業利益率が500ベーシスポイント悪化する見込みだと説明した。
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