4月9日(現地時間)、株式会社ゾゾ(ZOZO)が、英ロンドンに拠点を置くファッションショッピングプラットフォーム「リスト(LYST)」の全株式を1億5400万ドル(約231億円)で取得し、完全子会社化することを正式発表した。これはゾゾにとって初の海外企業の完全買収であり、グローバル市場への本格進出に向けた決定的な一歩となる。
リストは、2010年に設立されたファッション特化型プラットフォームで、プレミアムおよびラグジュアリーブランド2万7000社以上と連携し、年間1億6000万人超のユーザーを持つ。大きな特徴は、倉庫や在庫を持たないアフィリエイト型モデルにあり、ブランドの公式ECやグローバルなECモールを横断的に接続しながら、AIとファッションデータを駆使した発見型の購買体験を提供している点だ。さらに、四半期ごとに発表される「ザ・リスト・インデックス(The Lyst Index)」は、世界のファッション業界における影響力あるベンチマークとして知られる。
ゾゾ側も、ゾゾマット(ZOZOMAT)やゾゾグラス(ZOZOGLASS)といった独自のフィッティング技術、コーディネート共有アプリ「ウェア・バイ・ゾゾ(WEAR by ZOZO)」、そして米国市場で展開中の3Dボディスキャンサービス「ゾゾフィット(ZOZOFIT)」など、テクノロジーとデータを活かしたEC体験の深化に力を入れてきた企業である。今回の買収により、両社の強みを相互に掛け合わせ、ファッションECの新たな標準を共に築くことが期待されている。
この買収について、ゾゾ取締役の乾 卯太弘(Utahiro Inui)は次のように語っている。
「リストは、インスピレーションに満ちたショッピング体験という当社のビジョンと完璧に一致する、卓越したプラットフォームを構築してきました。業界における信頼性、独自のブランドボイス、先進的なテクノロジーと規模を兼ね備えた存在であり、ともにファッションショッピングの未来を再定義できると確信しています。私たちは、“世界をインスパイアし、毎日に喜びを届ける”という志のもと、ECの未来を共に切り拓いていきます」
一方、リストのCEOであるエマ・マクフェラン(Emma McFerran)も以下のようにコメントしている。
「これはリストにとって非常にエキサイティングな瞬間であり、当社の利用者やパートナーにとってもウィンウィンの展開だと確信しています。私たちはZOZOとともに、AIやテクノロジーを駆使して、ファッション業界により明るく素晴らしい未来を築いていきます。ZOZOの規模、知見、サポートによって、リストは“ファッションの発見”を再構築するためのより強固な立場を築くことができます」
買収完了は2025年4月末を予定しており、完了後もリストはロンドンを拠点に独立した運営体制を維持する。マクフェランは引き続きCEOとしての役割を担う。なお、本件におけるリストの財務アドバイザーはロスチャイルド&カンパニー(Rothschild & Co)が務めている。
ゾゾは今回の買収を通じて、リストのAI推薦技術やグローバルなブランドネットワークを取り込み、自社の日本市場におけるテクノロジー優位性と融合させることで、より発見に満ちたショッピング体験の提供を目指す。海外戦略の中核として位置付けられるこの買収は、ゾゾにとって国内トッププレイヤーからグローバルプレイヤーへと進化するための試金石であり、日本発ファッションテックの新たな可能性を示唆するものだ。
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