ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)、ニューヨークのソーホーに初の旗艦店をオープン

Dries Van Noten Store

4月18日(現地時間)、ベルギーのラグジュアリーブランドであるドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)は、ニューヨークのソーホーに初の旗艦店をオープンした。これは、先月のロンドンに続く出店であり、アントワープ、パリ、ロサンゼルスに次ぐグローバル展開の一環として注目を集めている。

ブランド創設から38年。デザイナーのドリス・ヴァン・ノッテンは大量出店や急成長を避け、一歩一歩着実に世界観を築いてきた。2022年にはビューティーとフレグランスのカテゴリを立ち上げ、今回のニューヨーク店も約20年かけて適切な場所とタイミングを見極めた上での出店である。

場所に選ばれたのは、ソーホーのマーサー・ストリートだ。ここはアライア(Alaïa)、マルニ(Marni)、バレンシアガ(Balenciaga)といったブランドが並ぶソーホーの中心地であり、ファッション感度の高いエリアとして知られる。店舗は幅が狭く奥行きのある構造で、天井高は約7メートル。ブランドの世界観を凝縮した「ジュエルボックス」のような空間となっている。

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店内には、レディ・トゥ・ウェアやアクセサリーのほか、ビューティーラインも展開。壁を彩るのは、イギリスの現代アーティスト、トレイシー・エミン(Tracey Emin)の2021年の作品や、17世紀の肖像画、ガエターノ・ペッシェ(Gaetano Pesce)のレジン製アームチェアなど、時代とジャンルを超えたアート作品の数々である。背面の壁には金箔が施されており、空間全体が舞台装置のような構成となっている。

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店舗デザインは、現クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・クラウスナー(Julian Klausner)とともに、ヴァン・ノッテン自身が監修。内装の中心には、ベルギーのデザイナー、ベン・ストームス(Ben Storms)の作品が存在感を放つ。金箔仕上げのパーティションや、床に沈み込むような大理石のテーブルなどが空間を立体的に構成している。

さらに、イタリアのガラス作家シモーネ・クレスターニ(Simone Crestani)による《SOS Save Our Sky》のインスタレーションも設置。NASAが宇宙の塵を採取するために使用した素材「シリカエアロゲル」を用いた作品で、都会の喧騒の中に静けさをもたらしている。

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ヴァン・ノッテンは今回の店舗デザインにおいて、アートやオブジェ、素材といった視覚的要素を重視しながらも、最も重要視したのは「建築そのものが持つ力」であったという。ある作品には素材の質感や風合いに惹かれ、また別の作品には、その空間を満たすボリューム感に魅せられたと語っている。

彼は、ロンドンの店舗が「アパートメントのような私的な空間」であるのに対し、ニューヨーク店は「アートスペースのように構築的で開かれた場所」であると位置づける。店内には、故アイリス・アプフェル(Iris Apfel)のコレクションから選ばれた燭台や、カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)によるメタルと木製のブックシェルフなど、ヴァン・ノッテン自身が長年かけて収集してきたアンティークピースが随所に散りばめられている。

一貫して時代の流れに迎合することなく、自らの美意識を軸に歩み続けてきたドリス・ヴァン・ノッテン。彼が紡ぐ世界は、洋服という枠を超え、空間のひとつひとつにまで息づいている。トレンドではなく、永続性と個の美を尊ぶ姿勢こそが、この静謐で洗練された空間に結実しているのだ。

 

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