米中貿易、90日間の関税一時停止で輸送回復へ─ 供給網と物価への影響とは

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5月12日(現地時間)、アメリカと中国は、スイス・ジュネーブで行われた閣僚級会合において、相互に課していた報復関税を90日間一時停止することで合意に達した。発表された共同声明によると、米国は対中関税を145%から30%に、中国は対米関税を125%から10%に引き下げる措置を5月14日より実施する。両国はこの期間中に継続協議を行い、さらなる貿易調整の可能性を模索する。

この一時的な関税緩和は、貿易と物流の即時的な回復を促すとみられ、特に輸送業界および小売・消費財業界には直接的な影響を及ぼす見通しだ。中国国内ではすでに大量のコンテナ貨物が積載を終えており、今後4〜6週間にわたり米国西海岸向けの出荷量が急増すると見られている。

ただし、30%という関税水準が依然として多くの企業の収益構造に与える懸念は大きい。コスト上昇に対応するため、小売各社の間では価格改定や原価管理の見直しが進んでおり、関税の恒久的な引き下げがなされない限り、サプライチェーン全体への圧力は続くとみられる。

今回の合意に際し、ホワイトハウスは「米国の製造業と雇用を守るための歴史的勝利」と強調。トランプ大統領は公式声明の中で、「不公正な貿易慣行と巨額の貿易赤字によって、アメリカの中核的産業が損なわれてきた。本合意はその是正に向けた大きな一歩である」と述べた。

関税緩和の具体的内容としては、2025年4月以降に発動された相互の追加関税の一部を撤回しつつ、基礎関税として10%の水準を維持する。中国は同時に、非関税障壁とみなされる措置の一部についても一時停止に合意。米国は、セクション301および232条による従来の制裁関税、フェンタニル対策としての関税措置などは継続するとしている。

今後の協議は、中国側からは副首相の何立峰(He Lifeng)、米国側からはスコット・ベセント(Scott Bessent)財務長官および通商代表ジャミソン・グリア(Jamieson Greer)が交渉団を率い、第三国を含む交互開催の形式で行われる予定である。

その一方で、物流面でも依然として課題が残る。海上輸送では今年第16週時点で太平洋航路における空船率が42%に達し、供給能力の低下が顕在化。関税緩和による需要急増と相まって、今後数週間にわたって運賃上昇やスペース不足が発生する可能性も指摘されている。

こうした状況を踏まえると、今回の措置は短期的には市場の安定に一定の効果をもたらすものの、不透明な関税制度のもとでは、意思決定やリスクマネジメントにおいて不確実性が残り続けると考えられる。中国を含む主要貿易相手国との間においては、長期的かつ持続可能な通商枠組みを構築することこそが、企業の中長期的な事業計画や価格戦略の前提となる。90日間という限定的な緩和措置を、より本質的な合意形成への足がかりとできるかどうかが、今後の重要な焦点となろう。

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