2006年のオープンからおよそ20年。ロンシャン(Longchamp)のニューヨーク・ソーホー旗艦店が、今週、鮮やかな進化を遂げた。場所はスプリングストリート132番地。ブランドのアメリカ展開の中核を担ってきたロンシャンの同店舗が、19年ぶりに大胆なリニューアルをし、ブランドが掲げる「体験としてのリテール」を体現する新たな拠点として生まれ変わった。
この旗艦店の設計を担当したのは、建築家トーマス・ヘザウィック(Thomas Heatherwick)率いるヘザウィック・スタジオ(Heatherwick Studio)だ。同スタジオは2006年のオリジナル店舗も手がけており、今回のプロジェクトは、当時のコンセプトを尊重しつつ、今日的な文脈で再構築されている。
外観は、ブランドを象徴する鮮やかなエナジーグリーンに塗装されており、歴史的な街並みに調和しつつも、程よいコントラストを生成。
また、店内に足を踏み入れると、同色にアップデートされたスチールリボン状の階段が、1階から2階へと流れるような動きで空間の軸を成す。
インテリアは、パリのアパルトマンのような住まいの温もりと、現代アートの視点を融合した構成になっており、2階には、1970年代のラファエル・ラフェル(Raphaël Raffel)によるヴィンテージソファや、デヴィッド・ナッシュ(David Nash)の彫刻作品、アンドレ・サライヴァ(André Saraiva)のグラフィティなどが並ぶ。さらに、ジオ・ポンティ(Gio Ponti)による1948年製のテーブルも象徴的な存在として設置され、ブランド創業の年との符号を感じさせる。
今回のリニューアルについて、CEOのジャン・カセグラン(Jean Cassegrain)は、「今日のリテールは、単なる機能性を超えて、感情と体験を中心に再構築されています」と声明で述べ、「ブランドカラーの鮮やかなグリーンの階段は、動きと勢いを体現しており、デヴィッド・ナッシュによるオーク彫刻は静けさと永続性をもたらします。この本物らしさとダイナミズムの対話こそが、新しいソーホー店の本質なのです。すべてのデザインディテールが温かみ、驚き、個性を空間に加えています」と語った。
単なる「商品を売る空間」から、ブランドの美学と価値観を立体的に体験できる場所へと進化したロンシャンのソーホー旗艦店。クラフトとテクノロジー、アートと実用性、歴史と未来が交差するこの空間は、ラグジュアリーブランドにおけるリテールの新たな指針を提示している。
なお、ロンシャンは現在、世界354店舗の直営店を展開しており、2024年は前年比20%の売上成長を達成。中でもアメリカ市場は27%増と、際立った成長を示し、アメリカ大陸は売上全体の13%を占めている。
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