「ヴェトモン(Vetements)」米国商標登録、司法判断で却下─ フランス語の「衣類」は一般名称と判断

Vetements

5月21日(現地時間)、フランス発のファッションブランド、ヴェトモン(VETEMENTS)は、米国における自社商標の登録を認められないという司法判断を受けた。

ブランドを展開するヴェトモン・グループAG(Vetements Group AG)は、標準文字およびデザイン化された「VETEMENTS」の商標登録を米国特許商標庁(USPTO)に申請していたが、同庁およびその審判部(Trademark Trial and Appeal Board:TTAB)は、これを「一般名称」に該当するとして拒否。これに対しブランド側が異議を唱えたが、米連邦巡回控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the Federal Circuit)はこの判断を支持し、最終的に登録は認められない結果となった。

「VETEMENTS」は商標として登録不可、理由は“一般名称”

この訴訟の発端は、ヴェトモン・グループAGが米国において「VETEMENTS」の商標登録を申請したことに始まる。だが、USPTOの審査官はこの語が商品そのものを示す一般名称であり、かつ「著しく記述的」であるとして、登録を拒否した。

審判部もこれを支持し、「外国語の同義語法理」を適用。これにより、外国語であっても米国消費者が理解可能であれば英語に翻訳され、一般名称または記述的であるかどうかを判断されるという原則が適用された。

翻訳される可能性が高いと判断された理由

また、連邦巡回控訴裁判所は「VETEMENTS」がフランス語であることを踏まえ、米国の一般的な消費者がこの語を「衣類(clothing)」と翻訳し得るかという点に注目した。判決では、「大多数ではなくとも、“相当数”のアメリカ人が理解可能であれば十分である」と明示されている。

さらに、根拠として挙げられたのが以下の事実である:

  • 米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)のデータによると、2010年時点で約210万人のアメリカ人が家庭内でフランス語を話していた。
  • フランス語は米国において英語以外で2番目に多く教えられている言語であり、話者数は全言語中で第4位に位置する。

このような背景から、「VETEMENTS」が衣料品に使用された場合、多くの消費者が「衣類」と解釈し、その語がブランド名というよりも商品一般を示すものと捉える可能性が高いと判断されたのだ。

識別力の有無は判断の対象外に

なお、審判部は補足的に「VETEMENTS」は仮に一般名称でなくとも、「単なる記述的」なものであり、識別力の獲得も認められないと指摘していた。しかし、連邦巡回控訴裁判所は「VETEMENTS」がすでに一般名称であると判断したため、この識別力の有無については詳細に検討する必要はないと結論づけた。

「一般名称とは、商標法における究極の記述性であり、たとえ使用歴や人気があっても、識別力を獲得することはできない」と判決文では述べられている。

グローバル展開の落とし穴──ネーミングと法的リスクの関係

今回のヴェトモンのケースは、米国市場をターゲットにする非英語圏ブランドにとって、ブランドネーミングの法的なリスクを浮き彫りにする判決である。特に、外国語で文化的に魅力的な名称であっても、それが該当商品の内容を直接表す語である場合、商標登録は極めて難しくなる。

外国語の美しさや響きをブランド価値とする戦略は、ファッション業界において広く見られるが、商標登録を視野に入れた展開においては、あらためて「意味」と「翻訳可能性」を慎重に検討すべきだ。

 

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