イタリアのラグジュアリーブランド、ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)が、ブランドを象徴するレザー編み技術「イントレチャート(Intrecciato)」の誕生50周年を記念し、国際的な著名人を多数起用した新キャンペーン「Craft is our Language」を発表した。
このキャンペーンは、フォトグラファーのジャック・デイヴィソン(Jack Davison)が撮影を手がけ、振付家レニオ・カクリア(Lenio Kaklea)が演出を担当。写真には、手元の繊細な動きや静かなポートレートが交互に織り交ぜられ、クラフトマンシップと人と人との“つながり”を象徴するイントレチャートの魅力が表現されている。
起用されたのは、音楽・映画・ファッション・アート・スポーツといった多様な分野のグローバルなクリエイターたちだ。ミュージシャンのタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)、ジャック・アントノフ(Jack Antonoff)、俳優の宮沢りえ、ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)、ローレン・ハットン(Lauren Hutton)、映画監督のダリオ・アルジェント(Dario Argento)、デザイナーのエドワード・ブキャナン(Edward Buchanan)、作家のザディ・スミス(Zadie Smith)、ストレイキッズ(Stray Kids)のアイエン(I.N)、テニス選手のロレンツォ・ムゼッティ(Lorenzo Musetti)など、世代もジャンルも超えた顔ぶれが並ぶ。
中でも、エドワード・ブキャナンは今回のキャンペーンに、過去と現在をつなぐキーパーソンとして登場している。1995年から2000年までの間、ボッテガ ヴェネタでプレタポルテ部門を率い、同ブランドにおける初のウェアコレクションを築いた経歴を持つ彼の視点は、クラフトの進化とブランドの軌跡を体現する存在として特別な意味を持つ。
また、ローレン・ハットンは、1980年公開の映画『アメリカン・ジゴロ』でイントレチャートのバッグを携えて登場し、その象徴的なスタイルが広く注目された。スクリーン上での印象的な登場は、ボッテガ ヴェネタのレザークラフトを静かなるラグジュアリーの象徴として世界に知らしめるきっかけとなった。
イントレチャートは、1975年にボッテガ ヴェネタのアトリエで誕生した独自のレザー編み技術である。細く裁断されたレザーストリップ「フェットゥッチェ(fettucce)」を、ベースとなるレザーや木型の上で斜めに交差させながら、職人の手によって丁寧に編み込むこの技法は、完成までに何時間、時には何日もかかる緻密な作業を要する。ヴェネト地方に根づく伝統工芸を土台としつつ、無駄を削ぎ落とした美学と高い機能性を融合させたこの構造は、ブランドの「ロゴに頼らない表現」を体現する、視覚的・触覚的なシグネチャーとなっている。時代やデザイナーが変わってもなお、イントレチャートは常に刷新され続け、色・スケール・素材の多様なバリエーションを通じて、クラフトの進化と対話を織り成してきた。
また、この50周年記念プロジェクトは単なる回顧ではなく、未来へと続く創造の旅でもある。2025年9月には、「Craft is our Language」の思想をより深く掘り下げるかたちで、ブランドの哲学、美意識、そしてクラフトへの姿勢を“50のジェスチャー”としてまとめた書籍が刊行予定だ。本書は、手の動きという普遍的な言語を通じて、ボッテガ ヴェネタが培ってきた価値観を視覚的に翻訳する一冊となる。
加えて、新たなビジュアルシリーズやショートフィルムも同時展開される見込みであり、この記念企画は、世代・文化・分野を超えて共鳴し合うクラフトの物語として、今後も深化し続けていく。
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