マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)、新ブランドを始動

Matthew M. Williams. Courtesy of Audemars Piguet

元ジバンシィ(Givenchy)クリエイティブ・ディレクター、マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)が、自身の名を冠したインディペンデントブランドを始動させる。コレクションは、2025年春夏メンズコレクションにあわせて開催されるパリ ファッションウィーク期間中、6月26日から7月1日にかけて、セイヤ・ナカムラのショールームにて初公開される予定である。

この新ブランドでは、メンズとウィメンズの両ラインを展開。ウィリアムズが長年貫いてきた「プロダクト主導」の姿勢を軸に、素材選びから縫製技術、仕上げに至るまで、あらゆる工程でクラフトマンシップを徹底する。大量生産を前提とした従来のラグジュアリーモデルとは異なり、より緻密で選び抜かれたものづくりへの回帰が、本プロジェクトの核となっている。

ウィリアムズは、自身のInstagramにて次のように述べている。
「すべてをゼロから始めなければなりませんでした。手の動き、素材、職人、技術──これらすべてが製品を唯一無二のものにしてくれるのです。」

さらに、「本質を見出し、新たな希望と創造性を見つけたかったのです。すべてを独立した形で」とも述べており、大手メゾンにおける経験から一歩引き、原点回帰を図る姿勢が読み取れる。

同ブランドはウィリアムズ自身が全額出資しており、日本のデニム工場、アメリカのジャージー専門メーカー、スペインのハンドメイドシューズ工房など、これまでのキャリアの中で築き上げた信頼あるサプライヤーとの連携によって、プロダクトの精度を高めている。

ウィリアムズは2015年に「1017 アリクス 9SM(1017 ALYX 9SM)」を設立し、インダストリアルかつ機能的な美学と、ナイキ(Nike)、モンクレール(Moncler)、オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)などとの協業で業界の注目を集めた。ストリートウェア全盛期を象徴する存在として知られたアリクスだが、トレンドの変化とともに近年は活動を縮小。2023年末には香港の実業家エイドリアン・チェン(Adrian Cheng)が同ブランドの過半数株式を取得し、組織再構築と方向性の再定義が進められている。

その影響もあり、アリクスは2024年以降、新作発表の頻度を抑える姿勢に転じており、ウィリアムズが新ブランドに注力する構図が鮮明になりつつある。

今回の新レーベル立ち上げは、トレンドや瞬間的な話題性に依存せず、あくまで“製品の中身”を主軸とした再出発である。ウィリアムズが得意としてきたストリートやポップカルチャーの再解釈ではなく、素材と仕立ての精度を追求する構築的アプローチへの移行とも受け取れる。

このパラダイムシフトがどのような反響を呼ぶのか──その答えは、6月のパリで明らかになるだろう。

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