2025年6月5日(現地時間)、イタリアのラグジュアリーメゾンであるプラダ グループ(Prada Group)は、皮革加工大手リノ・マストロット(Rino Mastrotto)への戦略的資本参加を発表した。本取引により、プラダはリノ・マストロットの株式10%を取得し、両社の関係性はこれまで以上に強固なものとなる。
この出資には、プラダ グループが完全子会社化したイタリアのコンチェリア・スペリオール(Conceria Superior S.p.A.)、およびフランスのタヌリー・リモージュ(Tannerie Limoges S.A.S.)を現物出資として提供し、さらに現金による追加出資も含まれている。これにより、プラダは皮革サプライチェーンにおける統制力を一層高め、原材料調達から製品化までの一貫した価値創出体制を強化する構えだ。
コンチェリア・スペリオールは、イタリア・サンタ・クローチェ・スッラルノ地区に拠点を構え、カーフスキン加工を専門とするタンナー。高い技術力と職人技、さらに持続可能性への積極的な取り組みで定評があり、プラダは2022年に同社の株主となっていた。
一方、タヌリー・リモージュは、70年以上の歴史を持つフランスのラムスキン専門タンナーであり、特にプランジェナッパの加工技術で知られる。プラダは2014年に同社の過半数を取得し、伝統技術の保存と発展に貢献してきた。
両社との協業は長年にわたって継続されており、今回の資本参加はその信頼関係をさらに深化させ、素材開発やサステナブルな生産技術の共同開発など、より高度な産業連携を促進する契機となる。
プラダ グループの会長兼エグゼクティブ・ディレクター、パトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)は次のように語っている。
「この出資によって、プラダはサプライチェーンの重要な部分である皮革加工に対するコントロールをさらに強化できます。品質、革新性、サステナビリティへの共通の価値観を持つリノ・マストロットとの協業によって、Made in Italyの価値創出を高めていきたいと考えています。」
また、リノ・マストロットのCEOマッテオ・マストロット(Matteo Mastrotto)も、「プラダの株主参加は、私たちが掲げる高級分野への継続的な投資の象徴であり、持続的成長に向けた産業ビジョンを共有できる存在です」とコメントしている。
この取引の完了は、2025年の第2四半期末から第3四半期初頭にかけてを予定しており、現在は関連する法的および慣例的な手続きが進行中である。
戦略的提携の背景と今後の展望
今回の資本提携は、素材供給網を垂直統合しようとするラグジュアリーブランドの動きの中でも、象徴的なステップだ。プラダはこれまでも自社工場の拡充やキーモジュールの内製化を通じて、ブランド価値を支える生産工程への統制を強化してきた。特に、製品の品質を左右する原材料段階からの関与は、ブランドの差別化戦略において中核的な要素となっている。
一方、リノ・マストロットは、イタリア国内外で高級素材企業を傘下に持つ複合企業体として、ファッション分野にとどまらず、自動車・インテリア産業にも進出。ESGに基づいたサステナブルな製造体制の確立を進めており、今後ますますラグジュアリー業界におけるキープレイヤーとしての存在感を強めていくことが予想される。
プラダにとってこの資本参加は、単なる素材供給強化にとどまらず、クリエイティブと産業の融合を加速させる戦略的な一手である。原材料から完成品に至るまで、徹底したクオリティと一貫した価値提供を行う体制の整備は、ラグジュアリービジネスにおける持続可能な競争優位の構築に直結していくだろう。
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