デンマーク発のセルジー(Cellugy)がEU資金810万ユーロを獲得ーバイオ由来の石油代替素材『EcoFLEXY』を商業化へ

Cellugy

マイクロプラスチックの代替を目指すバイオ素材が、欧州の支援を受けて大きく前進している。デンマークのインダストリアル・バイオテクノロジー企業セルジー(Cellugy)は、同社の新素材「エコフレクシー(EcoFLEXY)」の生産体制を強化し、商業化を本格化させるため、EUのLIFEプログラムより810万ユーロの助成金を獲得した。

セルジーが開発したエコフレクシーは、セルロースをベースとしたレオロジー修飾剤であり、スキンケアや化粧品に使用される化石燃料由来のカルボマー(Carbomer)に代わる持続可能な選択肢だ。これまでカルボマーは、EUREACH規制下でも「持続性があり有害」とされ、マイクロプラスチックによる環境・人体への影響に懸念があった。そんなカルボマーの代替としてエコフレクシーは、完全バイオベース、生分解性、高機能、コスト競争力をすべて兼ね備えた初の素材となっている。

今回の助成金は、バイオケア・フォー・ライフ(BIOCARE4LIFE)プロジェクトの一環として交付されたもので、今後4年間にわたって、エコフレクシーのプロセス最適化、商業検証、量産体制の構築に使用される予定である。同プロジェクトでは、2034年までに年間1,289トンのマイクロプラスチック排出削減を目指しており、これは世界中から数百万点の汚染された美容製品を市場から排除するインパクトに相当する。

プロジェクトの中心人物であるセルジー共同創業者兼CEOのイサベル・アルバレス=マルトス(Isabel Alvarez-Martos)は、「単によりサステナブルな代替素材を目指すだけでは十分ではありません。課題は、テクスチャー、機能性、使用感といった性能面で石油化学製品を上回る、バイオベースのソリューションを提供することです」と述べている。

さらに、「それと同時に、スケーラブルで運用効率にも優れていなければなりません。善意だけでは業界は変わりません。エコフレクシーのように、ブランドがサステナビリティを選びやすくする高品質な代替素材こそが必要なのです。バイオ素材が従来の成分と同等、あるいはそれ以上の性能と経済性を持って初めて、人間の健康と地球を守るために必要な変革が起こるのです」と続けた。

この説明からも読み取れるように、セルジーが見据えるのは「善意による環境配慮」にとどまらず、化石燃料由来素材を本質的に凌駕する質による産業変革である。

また、エコフレクシーは、従来のバイオ素材であるキサンタンガムやセルロースガムといった天然由来成分では実現できなかった高い安定性・互換性・使用感を提供する点でも特徴的だ。とくに化粧品の処方開発において、質感や使用感はブランド価値そのものに直結するため、性能を犠牲にしないサステナブル素材として、商業的な可能性が期待されている。

なお、今回のスケールアップには、循環型経済コンサルティング企業ザ・フットプリント・ファーム(The Footprint Firm)と、AIによる製造プロセス最適化を手がけるベルリン拠点のスタートアップ、サイ・トゥー・サイ(Sci2sci)の2社が技術パートナーとして参画している。

ザ・フットプリント・ファームのマネージャー、ウィル・ナン(Will Nunn)は、「このプロジェクトは、技術革新とサステナビリティの検証を組み合わせたものであり、EcoFLEXYの市場導入を非常に強力に後押しします。また、EU全体が目指す資源効率型経済への移行も支えるものです」と述べる。

また、サイ・トゥー・サイのCEO、アンジェリーナ・レスニコワ(Angelina Lesnikova)は、次のように語る。

「バイオテックソリューションのスケール化は簡単ではありませんが、真の価値はそこにあります。私たちの役割は、発酵条件からサプライチェーンの予測可能性に至るまで、生産のあらゆる層を最適化することです。エコフレクシーが石油化学製品と競争できるのは、環境的利点だけでなく、製造業者が重視するコストや性能の指標においても優れているからです。持続可能な化学が環境にとって不可欠であると同時に、経済的にも魅力的な選択肢になる可能性があるのです。」

『持続可能性を選ばせるのではなく、自然に選ばれるものにする。』
こうした思想は、今後のパーソナルケア産業における価値基準を、大きく塗り替える可能性を秘めている、と言えるだろう。

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