2025年6月11日〜13日(現地時間)にかけて、中国の深センで開催された『インターテキスタイル・深セン・アパレル・ファブリックス 2025(Intertextile Shenzhen Apparel Fabrics 2025)』および『ヤーン・エキスポ・深セン(Yarn Expo Shenzhen)』が、盛況のうちに幕を閉じた。
PHバリュー(PH Value)やバード・ファッション・フェア(BIRD Fashion Fair)と同時開催され、64の国と地域から約4万人の来場者を迎えた同展は、南中国が繊維・ファッション業界におけるグローバルなイノベーション拠点としての地位をさらに強固にしていることを示す結果となった。特に今回は、多様なマテリアル提案に加え、AIやデジタル技術を駆使した次世代型サプライチェーン、持続可能性を軸としたソリューションに注目が集まり、国際的なビジネス連携のプラットフォームとしての存在感を放った。
深セン発、未来志向のファッションが浮かび上がる新設ゾーン
中でも特筆すべきは、初登場となる2つの新設ゾーンだ。
ひとつは「ファッション・ギャラリー(Fashion Gallery)」。レディース、スポーツ、機能性ウェア、ランジェリーといったカテゴリーを横断するマテリアル展示に加え、エーアイディーラボ(AiDLab)やナノ・アンド・アドバンスト・マテリアルズ・インスティテュート(Nano and Advanced Materials Institute)といった先進的な研究機関が出展し、テクノロジーとファッションが交差する創造的な世界観を提示した。
さらに、もうひとつの「ザ・クローゼット(The Closet)」では、SFAA(サステナブル・ファッション・アパレル協会)、ミント・スタジオ(Mint Studio)、香港毛皮連盟(Hong Kong Fur Federation)などが、オーガニック素材やリサイクル繊維、伝統技術と先端技術の融合によるプロダクトを披露。泥染シルクや酵素ウォッシュ加工のデニムなど、クラフト×イノベーションを体現する提案が目を引いた。


AIとデジタルが拓く、アパレル産業の新たな地平
展示会と併催された「デジタル・アプリケーション・トレンド・フォーラム(Digital Application Trend Forum)」では、企画・設計から生産、物流までのフルプロセスのデジタル化がテーマに。深センスマート製造業振興協会や香港繊維アパレル研究所(HKRITA)といった専門機関が登壇し、AIによる工程最適化、サステナブルな物流設計、グローバルなテクノロジー連携の重要性について具体的な事例を交えて紹介した。
また、「インターテキスタイル・フォーラム(Intertextile Forum)」では「サプライチェーン再構築:デジタルインテリジェンスによるレジリエンス強化」をテーマに、急変する市場環境の中で柔軟性と持続可能性をどう両立させていくかが議論された。
さらに、「サステナブル × テクノロジー」を軸にしながらも、「アイデンティティの再構築」や「3D・アバター・AIツールを活用した没入型体験」など、ファッションにおける表現と体験の再定義も大きなテーマとなった。
香港を拠点に活動するリヴィウム(LIVVIUM)創業者のオリビア・リー(Olivia Lee)は、「ファッションの再構築には、サプライチェーン全体を見渡す視点と、そこに革新性を加えるアプローチが必要です。ここ深センで、その未来をリアルに感じることができました」とコメントしている。

プレミアム素材の発掘と国際連携が進む展示フロア
出展者数は約650社にのぼり、日本、韓国、ドイツ、イタリアなどからも多数のブランドやメーカーが参加。特に日本と韓国のパビリオンでは、リサイクル素材や高機能ファブリックへの関心が高まり、活発な商談が行われていた。
来場バイヤーには、アディダス(Adidas)、エイソス(ASOS)、リーバイス(Levi’s)、ザラ(Zara)、ルルレモン(Lululemon)、シックスティエイト(6ixty8ight)といったグローバルブランドが名を連ね、素材調達から製品開発まで幅広い工程でのパートナーシップを模索する姿が見られた。加えて、シンガポール・ファッション協会やベトナム繊維アパレル協会などもバイヤー団体として参加し、アジア全体を巻き込む連携の広がりが感じられた。



今回の展示会について、イタリアのポリカルポ(Policarpo)社の営業マネージャー、マイケル・リー(Michael Lee)は、「深センは特にレディースアパレル市場に強みがあり、多様な顧客層と出会えました。今年は来場者数も増加しており、次回の上海展にも出展予定です」とコメント。
また、香港毛皮連盟の会長、ウィリアム・サン(William Sun)は、持続可能なファー素材の提案について「来場者からの関心も高く、レディース・メンズ問わず新たなコラボレーションのチャンスが広がりました」と振り返る。
エーアイディーラボ(AiDLab)でシニアマーケティングオフィサーを務めるジャスティン・コー(Justin Ko)は、「AIを活用したファッション向けソリューションは、ファブリックメーカーやデザイナーから大きな関心を集め、実用化に向けた手応えを感じています」と語った。
なお、メッセ・フランクフルト(香港)有限公司(Messe Frankfurt (HK) Ltd)のゼネラルマネージャー、ウィルメット・シェア(Wilmet Shea)は閉幕にあたり次のように述べている。
「南中国は今なお、ファッション生産とデザインの主要拠点として力強く発展を続けています。特にECの成長と消費者ニーズの変化により、市場は急速に進化しています。展示会では、豊富な生地調達オプションやAIを活用したデジタルソリューションの導入など、協業とイノベーションの可能性が随所に見られました。業界のバリューチェーン全体をつなぐビジネスプラットフォームとして機能したこと、そして先端的なテーマで知見を共有できたことを嬉しく思います。」
次回は、2025年9月2日〜4日にかけて、上海にて『インターテキスタイル・上海・アパレル・ファブリックス 秋展(Intertextile Shanghai Apparel Fabrics – Autumn Edition)』および『ヤーン・エキスポ・オータム(Yarn Expo Autumn)』の開催が予定されている。
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