スーパーモデル、ケイト・モス(Kate Moss)が手がけたビューティー&ウェルネスブランド「コスモス(Cosmoss)」が、設立からわずか3年で事業を終了することが明らかになった。英企業登記機関「カンパニーズ・ハウス(Companies House)」に提出された書類によると、同ブランドは6月24日付で正式に任意清算手続きに入った。
モスが2022年9月にローンチしたコスモスは、フレグランスやCBD配合のフェイスオイル、クレンザー、ハーブティーなど、ビューティーとウェルネスを融合した全6製品でスタート。その後も無香料タイプの商品やアファメーションブック『Love Letters Book of Affirmations』を展開し、アイルランド、フランス、ドイツ、米国など複数市場への進出を果たしていた。
しかし、事業報告によれば、コスモスは約300万ドルの債務を抱えており、その大半はモス本人が設立した「ケイト・モス・エージェンシー(Kate Moss Agency)」に対するものだった。モスは筆頭株主であり、共同出資者としてブランドインキュベーターの「Warsaw Labs」および3名の個人投資家が名を連ねていた。
コスモスの清算理由については、100ポンド超のスキンケアという製品価格帯と、モスのブランドイメージとの乖離が指摘されている。ミステリアスな印象が強いモスが、ウェルネスやセルフケアの象徴として再定義を試みたことに、説得力が欠けていたとの見方も多い。また、ソーシャルメディアを通じたブランドストーリーテリングが限定的で、消費者とのエンゲージメントが不足していたことも、現代的なD2Cブランド戦略とのギャップとして浮き彫りになったようだ。

ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)のスキンケアブランド「ロード(Rhode)」が、2025年6月にe.l.f.ビューティーによって約10億ドルで買収されたというニュースが象徴するように、セレブリティ主導のビューティー業界は今、より戦略的で実業的なアプローチを求められている。
さらに、セレーナ・ゴメス(Selena Gomez)が手がける「レア ビューティー(Rare Beauty)」も、セレブリティブランドの枠を超えた本格的なビジネスとして評価されており、2023年には売上が3億ドルを突破。2024年には、ゴメス自身の純資産は13億ドルに達したと報じられている。
コスモスの事業終了は、ケイト・モスという世界的アイコンをもってしてもネームバリューだけでは持続的な成功が見込めないという現実を突きつける。セレブリティ主導のブランドにも、明確なバリュープロポジション、緻密なマーケティング戦略、そして顧客との信頼構築が求められる時代なのだ。
今後、ラグジュアリーやビューティー業界におけるセレブリティブランドの成否は、“誰が作ったか”だけではなく、“何を、どのように届けるか”が問われることになるだろう。
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