LVMHが経済メディア「ロピニオン」「ラジェフィ」を完全買収─ 仏報道界での存在感をさらに強化

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フランスのラグジュアリーコングロマリット、「LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)」は、フランスの日刊紙「ロピニオン(L’Opinion)」および、経済ニュースサイト「ラジェフィ(L’Agefi)」を擁する「ベイ・メディア(Bey Médias)」の全株式を取得した。これにより、LVMHは同社の完全オーナーとなり、フランスメディア界での影響力をさらに強める構図となった。なお、買収金額は公表されていない。

今回の取引でLVMHは、創業者であり会長を務めるニコラ・ベイトゥ(Nicolas Beytout)が保有していた38%の株式を含め、すべての株主から持分を取得。株主には、ロレアル創業家ベタンクール家の投資会社テティス(Théthys)をはじめ、米国の著名投資家ケン・フィッシャー(Ken Fisher)、そしてダウ・ジョーンズ(Dow Jones)を保有するルパート・マードック(Rupert Murdoch)が名を連ねていた。

LVMHは、ロピニオンが創刊された2013年当初から出資しており、近年ではベイ・メディアの25%を保有する筆頭株主であった。今回の買収により、出資比率は100%となり、ベイ・メディアは同グループの完全子会社となる。LVMH傘下の投資子会社である「ユフィパル(Ufipar)」に組み込まれる見通しだが、運営体制はあくまでも独立性を保ち、すでにグループが所有するメディア媒体「レゼコー(Les Échos」)や「ル・パリジャン(Le Parisien)」とは異なる組織として扱われるという。

編集体制に関しても大きな変更はなく、ベイトゥは引き続きベイ・メディアの会長職を継続する。また、ロピニオンの編集長レミ・ゴドー(Rémi Godeau)と、ラジェフィの編集ディレクターであるアレクサンドル・ガラベディアン(Alexandre Garabedian)も、それぞれのポジションに留まる予定だ。編集部は現在の所在地であるパリ16区にそのまま残り、組織の継続性と編集方針の自立性は維持される。

近年、ロピニオンは収益面で苦戦を強いられていたものの、ラジェフィは経済・金融メディアとしての信頼性と収益性を兼ね備えた媒体として、高い評価を得ている。ベイ・メディア全体ではおよそ150名が勤務しており、従業員の雇用も維持されるとみられている。

なお、今回の完全買収は、2025年初頭に交渉が決裂したチェコの実業家ダニエル・クレチンスキー(Daniel Kretinsky)との売却協議が背景にある。これまでクレチンスキーは、エル(Elle)やマリアンヌ(Marianne)といった複数の仏メディアを傘下に持つCMIフランスを通じて、ベイ・メディアの買収に関心を示していたが、最終的には実現に至らなかった。

一方、LVMHは、2024年10月にも、長年フランスの週刊誌界を代表してきた「パリ・マッチ(Paris Match)」をラガルデール・グループ(Lagardère Group)から買収しており、ここ数年で急速に仏報道機関への影響を拡大している。今回の買収もその流れの一環であり、LVMHによる報道網の構築は、文化的プレゼンスのさらなる強化を意味している。

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