ジェーン・バーキン(Jane Birkin)が所有したエルメスの”オリジナル・バーキン”、サザビーズで日本人コレクターが10億円超えで落札

Jane Birkin

7月10日(現地時間)、パリで開催されたサザビーズ(Sotheby’s)の「Fashion Icons」オークションにて、故ジェーン・バーキン(Jane Birkin)が実際に使用していたエルメス(Hermès)のオリジナル・バーキンバッグが、手数料込みで8.6百万ユーロで落札された。これは、ファッションアイテムとしてはオークション史上2番目に高額な取引額である。

このバッグは、1984年にエルメスがジェーン・バーキンのためだけに製作したプロトタイプであり、彼女のイニシャル「J.B.」がフラップ部分に刻まれている一点物だ。落札したのは日本のプライベートコレクターで、サザビーズによれば電話で入札に参加した9名のうちの一人だった。競り合いは約10分間続き、最終入札額7百万ユーロ(手数料込みで8.6百万ユーロ)で落札が確定した。

サザビーズによると、この価格は、2021年にエルメスの「ホワイト・ヒマラヤ・ニロティカス・クロコダイル・ダイヤモンド・ケリー28」が記録した51万3,040ドルの記録を大きく更新し、バッグ単体としては史上最高額となる。なお、ファッション関連アイテム全体での最高額は、2024年に「オズの魔法使い」で使用された赤い靴が記録した3,250万ドルである。

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バーキンバッグ誕生の背景には、ジェーン・バーキンと当時のエルメスCEOであるジャン=ルイ・デュマ(Jean-Louis Dumas)との偶然の出会いがある。1980年代、ロンドン行きのフライトで隣り合わせた二人は、バーキンが機内で荷物を床に落としたことをきっかけに会話を始め、彼女が「もっと収納力のあるバッグが欲しい」と不満を口にした。そこでデュマは、機内のエチケット袋にその場でバッグのスケッチを描き、のちにプロトタイプを製作。バーキンがそのバッグに満足し、商業化を快諾したことで、今日の「バーキンバッグ」シリーズが誕生した。

サザビーズのハンドバッグ&ファッション部門責任者モルガーヌ・ハリミ(Morgane Halimi)氏は、次のように語っている。

「オリジナルのバーキンバッグは、まさに唯一無二の存在であり、ファッション史における特別な一品です。時を経てポップカルチャーの現象となり、洗練されたかたちでラグジュアリーを象徴するアイコンへと成長しました。もともとはジェーン・バーキン様のために、エルメスが実用的なバッグとしてデザインしたものですが、それが現在では史上最も憧れられるバッグとなったことは、実に驚くべきことです。」

今回落札されたバッグは、当時エルメスの「オータ・ア・クルー(Haut à Courroies)」モデルを基に手作業で製作されたプロトタイプであり、商業モデルとは7つの設計上の違いがあるとサザビーズは説明する。その一つが、取り外し不可能なショルダーストラップであり、実用性を重視したジェーン・バーキンのライフスタイルを反映している。また、バーキンはネイルを長く伸ばすことを好まなかったため、バッグには爪切りが付属していたという。

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バーキンはこのプロトタイプを約10年使用した後、1994年にエイズ支援チャリティーのために初めてオークションに出品。その後2000年にも再び出品され、以降は個人コレクターが所蔵していた。

今回の出品者であるキャサリン・B(Catherine B.)はオークション後の取材に対し、「このバッグにはスターのすべての資質がある」と語り、「この価格はエルメスという物語の価値そのものだ」と述べた。

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