グローバルに展開するファッション&ラグジュアリーグループのOTBが、2024年版のサステナビリティ・レポートを発表した。ディーゼル(Diesel)、メゾン マルジェラ(Maison Margiela)、ジル サンダー(Jil Sander)、マルニ(Marni)などを傘下に持つ同グループは、サステナビリティを中核に据えた経営戦略を進化させ、環境・社会・ガバナンス(ESG)の各分野において具体的な成果を可視化している。
同レポートでは、温室効果ガス排出量の大幅削減や再生可能エネルギーの導入、責任ある素材調達の比率向上に加え、デジタル技術を活用した真正性保証や模倣品対策、人材・社会貢献分野における取り組みまで、包括的な進捗が報告された。
OTBは、どのようにして持続可能性をブランド価値と競争優位に結びつけているのか。
排出量31%削減、欧米拠点では再エネ100%
まず、環境面では、2023年と比較してグループ全体の温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)が31%削減された。加えて、欧州および北米における全直営拠点では100%再生可能エネルギーへの転換を達成。グローバル全体でも再エネ比率は70%に達しており、気候変動対策において国際的な基準とされるSBTイニシアティブ(Science Based Targets initiative)にも準拠している。
サステナブル素材の採用拡大
また、環境負荷の少ない素材選定にも大きな進展が見られた。2024年には、グループが調達した原材料のうち24%が認証付き素材となり、その中でもオーガニックやリサイクル由来の「望ましいコットン」は全体の62%を占めるまでに拡大。前年からの伸び率は31%にのぼり、循環性とトレーサビリティを重視したデザイン方針が各ブランドに浸透していることがうかがえる。
デジタル証明書の発行、偽造品対策の強化
テクノロジーの活用においてもOTBは先進的な動きを見せている。LVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Louis Vuitton Moët Hennessy)やプラダグループ(Prada Group)とともにAura Blockchain Consortiumに参画し、2022年以降、ジル サンダー、メゾン マルジェラ、マルニの製品に対して180万件を超えるデジタル真正証明書を発行。スマートフォンを通じて商品の真贋や生産履歴にアクセスできる環境を整えた。
さらに、模倣品対策にも注力しており、2024年には23,000件以上の違法コンテンツを削除し、60,000件を超える偽造品のオンラインリストを排除している。
ディーゼルのリユース戦略が高評価、国際賞も受賞
サーキュラー・エコノミーにおいても成果が際立った。ディーゼルは、リユースやリサイクルを中心とした循環型ビジネスへの取り組みが評価され、「ディーゼル・リハブ・デニム」や「ディーゼル・セカンドハンド」、さらにはUNIDO(国連工業開発機関)との協働プロジェクトにより、エレン・マッカーサー財団から「サーキュラー・エコノミー賞」を受賞。イタリアファッション協会主催の「2024サステナブル・ファッション・アワード」においても高く評価された。
男女平等認証、次世代育成、企業ボランティア
人的資本への投資も継続されており、グループ内の女性管理職比率は54.7%を記録し、男女平等認証の再取得につながった。さらに、次世代の職人育成を目的とした社内研修「Scuola dei Mestieri」を通じて、メイド・イン・イタリーの技術継承にも注力している。
また、新たに導入された企業ボランティア制度「Brave to Care」では、130人以上の従業員が参加し、イタリア全土の8つの慈善団体に700時間を超える支援活動を提供。社員と社会をつなぐプラットフォームとしての意義を高めている。
OTBファウンデーションによる多層的な社会支援
加えて、OTBファウンデーションは2024年もその多層的な社会貢献活動を継続。若者へのメンタルサポートを目的とした無償オンラインカウンセリング「OTB Chiama Alice」や、経済的困難を抱える家庭への食料・必需品支援など、幅広い領域での支援を展開した。特筆すべきは、アフガニスタンでの女性起業家支援プロジェクト「Brave Business in a Bus」であり、自宅での小規模事業の立ち上げを可能にする移動式インキュベーターとして注目を集めている。
OTBグループが掲げる「Be Responsible. Be Brave.(責任を持ち、勇敢であれ)」というスローガンは、単なるスローガンにとどまらず、企業の根幹に据えられた実践的な価値観として機能している。環境・社会・経済の三位一体で変革を試みるOTBの戦略は、ファッション業界における「持続可能性の次の段階」を具体的に示す好例と言えるだろう。
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