中国発のトイブランド「ラブブ(LABUBU)」が世界的なカルチャー現象となるなか、知的財産権を巡る新たな法的対立が浮上している。ラブブを展開するポップマート(Pop Mart)は7月18日(現地時間)、米カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所にて、セブンイレブン(7-Eleven, Inc.)および同州内のフランチャイズ店舗8社を相手取り、ラブブの偽造品を販売していたとして訴訟を提起した。
ラブブは、ブラックピンクのリサ(LISA)やフィリピンのファッションアイコンであるハート・エヴァンジェリスタ(Heart Evangelista)といった著名人のSNS発信を通じて、一気に世界的な注目を集めたキャラクターである。現在では正規品が即完売するほどの人気を誇り、米国市場では「ラフフ(LAFUFU)」と呼ばれる模倣品までもが出回るなど、ブランドの熱狂的な需要を物語っている。
訴状によれば、セブンイレブンの一部店舗では、正規品に酷似したラブブのフィギュアが販売されており、外観こそ似ているものの、「品質は著しく劣る」とポップマートは主張。具体的には、目の取り付け不良、粗雑な縫製、頭部の歪み、さらには顔が逆さまになっているといった製造上の欠陥が指摘されている。パッケージまで精巧に模倣されているが、完成度には大きな差があるという。
ポップマートはラブブの造形を、法的に保護される「トレードドレス(商品等表示)」として定義。9本の鋭い歯を見せる大きな笑顔、眉をひそめたような目元、逆三角形の小さな鼻、頭の上にある2つの尖った耳、4本指の短い腕と爪をもつ足など、その独特な造形が消費者の間でラブブの象徴として認識されていると説明している。

こうしたデザインは、単なる玩具の域を超え、ブランドイメージそのものとして機能しており、ポップマートはその保護に多額の投資を行ってきた。訴状によると、同社は2024年に米国市場で3,400万ドルを売り上げ、広告費には200万ドル以上を投じた。「ザ モンスターズ(THE MONSTERS)」シリーズ全体では、年間売上が4億2,000万ドルを超えており、ラブブはその中核を担う存在である。
今回の訴訟では、商標権侵害、著作権侵害、トレードドレス侵害、不正競争など複数の法的根拠に基づき、ポップマートは金銭的損害賠償に加え、偽造品の販売差し止めと是正広告の実施を求めている。
また、争点のひとつとなっているのが、セブンイレブンのフランチャイズ制度における本部の責任範囲だ。ポップマートは、セブンイレブンがフランチャイズ店舗の在庫管理や販売システム、マーケティング活動に対して一定の統制を行っていることを挙げ、販売実態があった以上は本部も直接的または代位的に責任を負うべきだと主張する。
訴状には、消費者が正規品を求めてセブンイレブンを訪れたものの、実際に購入したのは粗悪な偽造品であったという映像証拠も提出されている。
この訴訟は、フランチャイズ本部が加盟店の違法行為にどこまで責任を負うべきかという、現代の小売モデルにおける重要な論点を提起している。たとえ本社が偽造品の存在を事前に把握していなかったとしても、実際に販売されていたという事実が確認されれば、多大な法的・経済的責任を免れない可能性もあり得る。
アートトイとラグジュアリー商品の境界がますます曖昧になる中、ラブブのようなブランドにとって真正性は、ブランド価値そのものを支える柱だ。今日のように、フランチャイズ店舗が本部の許可なく独自に商品を仕入れ販売することが容易になっている時代において、今回の訴訟は、そうした行動が本部に深刻な影響を及ぼし得ることを象徴する事例である。
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