アントニオ マラス(Antonio Marras)、初の海外旗艦店をニューヨークのソーホーにオープン

Antonio Marras

イタリアのラグジュアリーブランド、アントニオ マラス(Antonio Marras)がこのほど、初の海外旗艦店をニューヨークにオープンした。サルデーニャ島出身のデザイナー、アントニオ・マラス(Antonio Marras)が手がけるこのブランドにとって、今回の出店はグローバル展開に向けた記念すべき第一歩となる。

新店舗は、19世紀に建てられた歴史的な建物を活用し、ニューヨーク・ソーホーのウースターストリート121番地に位置する。店舗面積は約700平方メートルで、そのうち約400平方メートルが販売スペースとして構成されている。

ソフトオープンは2025年7月19日(現地時間)に実施され、正式なオープニングイベントは2025年9月12日(現地時間)、ニューヨーク・ファッションウィーク期間中に開催される予定だ。

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新たにオープンした旗艦店に足を踏み入れると、そこにはアントニオ・マラスというデザイナーの美意識や感性、そして彼自身の記憶が丁寧に織り込まれた世界が広がっている。

店の近くを流れるハドソン川の水は、彼の故郷サルデーニャの海を思い起こさせ、眠らない街・ニューヨークの活気は、マラスの内面と強く共鳴する。多様な文化が共存するニューヨークの姿は、同じく多文化が交差する故郷アルゲーロと重なる部分が多く、この街を次なる創造の舞台に選ぶことは、彼にとってごく自然な流れだったのだ。

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歴史を感じさせる建築美と空間演出

建物本来の意匠を最大限に活かした空間設計も、同店の見どころだ。ブリキの天井、鋳鉄の柱、露出したレンガ壁、そしてセメントの床が、19世紀建築の持つ歴史的深みを静かに語っている。

エントランスには、マラスが敬愛するアーティスト、マリア・ライ(Maria Lai)へのオマージュとして、サルデーニャの伝統織機をテーマにした立体的なインスタレーションが設置。セラミックと木材、ロープを用いたこの作品は、クラフトと詩情が交差する象徴的な存在だ。

また、店内には、サルデーニャから運び込まれた家具やラグに加え、ニューヨークで集められたヴィンテージの什器も随所に見られる。異なる時間や場所の断片がひとつの空間の中で静かに共鳴し合い、“最初からそこにあったかのような”自然な調和を感じさせる構成となっている。ラジエーターや教会の手すりといった再利用素材も、独自の味わいを添えている。

天窓から光が差し込む奥のスペースには、温室を思わせるガーデンエリアが広がる。ネオクラシカルとバロックを融合させた家具、大きなクリスタルのシャンデリア、手作りの陶器に植えられたミルトの鉢植えが並び、まるでサルデーニャの自然が都市の中に出現したかのような印象を与える。

また、カルロ・モリーノ(Carlo Mollino)のテーブルや、マリオ・ベリーニ(Mario Bellini)の「カマレオンダ(Camaleonda)」ソファといった、20世紀イタリアンデザインの名作も配置されており、伝統と革新が共存するブランドの姿勢を体現している。

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オニバース傘下で加速するグローバル展開

アントニオ・マラス(Antonio Marras)は、2022年に旧カルツェドニア・グループであるオニバース(Oniverse)の傘下に加わって以降、リテール事業の強化とともにグローバル展開を本格的に推進している。今回、ブランド初となる海外旗艦店の地としてニューヨークを選んだ背景には、顧客の約3割がアメリカ市場に集中しているという実績もある。

オニバース会長のサンドロ・ヴェロネージ(Sandro Veronesi)は、「ニューヨークでの出店は、ファッション、アート、デザインが交差する場所として、ブランドのアイデンティティをより深く体現するものです」と語り、今回の旗艦店が戦略的にも象徴的にも極めて重要な意味を持つことを示している。

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