7月24日(現地時間)、LVMH モエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)は、2025年上半期(1〜6月)の連結決算を発表した。売上高は398億ユーロ(前年同期比4%減)、営業利益は90億ユーロ(同15%減)、純利益は57億ユーロ(同22%減)と、主要指標は軒並み前年を下回り、グループは減収減益となった。
中でも注目されたのは、グループ最大の収益源であるファッション&レザーグッズ部門の動向だ。2025年上半期の売上は191億ユーロと、前年同期の208億ユーロから9%減少。営業利益も18%減の66億ユーロとなり、LVMH全体の業績に大きな影響を与えた。ルイ ヴィトン(Louis Vuitton)やディオール(Dior)などの基幹ブランドを擁するこのセグメントは、ラグジュアリー業界に広がる需要の鈍化を如実に反映している。
特に日本市場では、2024年の円安を背景とした観光消費の特需が反動減となり、売上が大きく落ち込んだ。中国を含むアジア地域でも消費の勢いは鈍化している。一方で、欧州や米国におけるローカル需要は比較的安定しており、同部門全体では依然として高水準の営業利益率を維持した。
ブランド別では、ルイ ヴィトンが依然として部門の中核を担っている一方で、ディオール、セリーヌ(Celine)、ジバンシィ(Givenchy)、ロロ ピアーナ(Loro Piana)といった主要ブランド群も、観光消費の減少や価格高騰への消費者意識の変化といった課題に直面している。
一方で、パフューム&コスメティクス部門は前年並みを維持。売上高は40億8200万ユーロで、オーガニック成長率は±0%。ディオールの「Sauvage」「J’adore」「Dior Homme」などのフレグランスが堅調で、ゲラン(Guerlain)、ジバンシィ、メゾン フランシス クルジャン(Maison Francis Kurkdjian)などのスキンケアや新製品も売上を下支えした。
ウォッチ&ジュエリー部門では、売上高が50億9000万ユーロと前年並みを維持しつつ、ティファニー(Tiffany & Co.)による新店舗コンセプト「The Landmark」の展開が進んだ。ブルガリ(Bvlgari)の「Serpenti」や新作ハイジュエリー「Polychroma」なども、ブランドの世界観強化に貢献している。
セレクティブ・リテーリング部門では、セフォラ(Sephora)が引き続き成長軌道を維持。売上は86億2000万ユーロ(オーガニック成長+2%)、営業利益は12%増の8億7600万ユーロとなり、オムニチャネル戦略とロイヤル顧客基盤の拡大が奏功した。
決算発表にあたり、会長兼CEOのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)は次のように述べている。
「LVMHは、現在の環境下においても堅実さを発揮しました。これは、当社の象徴的なブランドの力と、その比類なき職人技の文化に忠実でありながらも、無限のイノベーション力を維持していることによるものです。不透明な状況が続く中でも、私たちは常にファミリー企業としての長期的ビジョンに導かれ、品質と魅力の追求を続けてきました。」
なお、ディオールでは、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が新たなクリエイティブ・ディレクターに就任。6月にパリのアンヴァリッドで発表された初のメンズコレクションは大成功とされ、ブランドの今後に向けた勢いを感じさせた。
一方、信頼性が重視されるラグジュアリービジネスにおいて、ロロ ピアーナが労働環境をめぐる問題でイタリア・ミラノの裁判所から1年間の司法管理下に置かれる決定が下されたことは、グループのイメージに影を落としている。過去にはクリスチャン ディオール(Christian Dior)も同様の措置を受けた経緯があり、ブランドの倫理的ガバナンスが問われる状況にある。
LVMHは通期見通しについて慎重な姿勢を示しつつも、「卓越した製品品質と革新性、ブランドの魅力向上に引き続き注力する」としており、10月に控えるロエベおよびディオールの新コレクション発表にも注目が集まる。
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