エルメス(Hermès)、日本市場で14.7%の成長を記録─ 第2四半期も堅調な推移

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7月30日(パリ現地時間)、エルメス・インターナショナル(Hermès International)は2025年上半期決算を発表し、全世界的な経済不透明感が広がる中でも引き続き力強い成長を示した。第2四半期の売上高は39億ユーロに達し、為替一定ベースで前年同期比9%増に。これは、アナリストの予想をやや上回る結果であり、ブランドの揺るぎない価値とグローバル市場における需要の安定性が浮き彫りとなった。

上半期(1〜6月)の売上高は80億ユーロで、為替一定ベースで8%増、実際の為替レートでも7%増を記録。営業利益は33億ユーロ(売上比41.4%)となり、前年同期比6%の増加となった。一方で純利益は22億ユーロと前年同期の24億ユーロから減少したが、これはフランスにおける大企業向けの特別課税が影響している。この影響を除いた場合、純利益は25億ユーロとなり、前年比6%の増加を示した。

地域別に見ると、日本市場が特に好調で、第2四半期は14.7%増の3億9200万ユーロに達した。これは、LVMHが同期間に日本での減収を記録したのとは対照的な結果である。さらに、中国を含むアジア市場全体(日本を除く)は第2四半期に5.3%の成長を記録。経済の先行き不透明感が漂う中でも、エルメスは価値重視の戦略によって堅調な需要を維持した。

また、アメリカ市場も2桁成長を維持し、12.3%増の7億6000万ユーロを記録。5月初旬に米国で実施された価格改定が、為替の影響を一部相殺した。なお、アメリカとEU間で合意された新たな貿易枠組みに基づく関税(ベースライン15%)が今後発効予定であり、同社はその動向を注視している。

エルメス・インターナショナルの最高経営責任者(CEO)であるアクセル・デュマ(Axel Dumas)は、「他社が中国市場にシフトした中でも日本への継続的な投資を続けてきたことが、地元顧客との強い関係を背景に、強靭なビジネスモデルを築いています」と、好調な日本市場について説明。

また、「全地域における堅調な上半期の業績は、エルメスのビジネスモデルの強さを示すものです。信頼を寄せてくださるお客様、そして日々尽力している社員の皆さんに心より感謝します。今後も持続的な成長のために、投資と採用を続けてまいります」と述べた。

製品別では、レザーグッズ部門が14.8%増の17億6000万ユーロと、エルメスの成長をけん引。ケリー(Kelly)やバーキン(Birkin)などの定番バッグに加え、「Faubourg Express」や「P’tit Arçon」などの新モデルも好調である。今後もフランス国内において年間4つのレザー工房を開設予定であり、生産能力のさらなる強化が進む見通しだ。

一方で、ベルト、コスチュームジュエリー、スカーフ、香水といったエントリーレベルの製品群には減速傾向が見られる。プレタポルテ部門は3.8%、シルク製品は2.2%の微増に留まっており、これはアクセサリー需要の低下が要因とされる。香水・ビューティ部門は7.2%減、時計部門も5.5%減となったが、スイス・ノワルモンの時計工房拡張計画が進んでおり、中長期的な回復が見込まれている。

また今期、台湾とマカオでの店舗改装が終わり、営業が再開。さらに、北京とドバイでの大型リノベーション、そしてスコッツデールやナッシュビル(米国)、深セン・広州(中国)での新店舗開業が予定されている。通年の投資額は10億ユーロを超える見通しで、デジタル基盤や物流、テキスタイル・ホームウェア・フレグランスの上流工程への強化投資が進められている。

エルメスといえば、先日パリのサザビーズ(Sotheby’s)で開催されたオークションにおいて、故ジェーン・バーキン(Jane Birkin)本人が所有していた“オリジナル・バーキンバッグ”が、日本企業・バリュエンスジャパン株式会社によって860万ユーロ(約14億7000万円)で落札され、大きな話題を呼んだ。

しかしこの件について、CEOのアクセル・デュマ(Axel Dumas)は、「我々は中古市場に関心がなく、一切参加していない」と明言。「当社の価格は製造コストに基づいており、オークションのように市場価値によって価格が吊り上がる仕組みとは一線を画している」と述べ、同社の一貫した価格戦略を強調した。

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