資生堂(Shiseido)が米国人員を大幅削減ー ドランク エレファントの不振で構造改革を加速

Drunk Elephant

資生堂(Shiseido)が米国事業の立て直しに向け、大規模な構造改革に踏み切る。米国全従業員の15%超にあたる約300人を削減し、収益改善を急ぐ方針だ。

同社は先月の時点で、『Business of Fashion(BoF)』に対し、人員削減に関して次のようなコメントを出している。

「資生堂アメリカでは、成長と収益性の回復を目指し、事業の再構築を進めております。その一環として、社内の一部ポジションを削減するという非常に難しい判断を下すこととなりました。なお、今回の措置により影響を受けられた従業員の皆さまには、移行期間中の支援を提供させていただく予定です。」

背景:業績悪化の主因はドランク エレファント

8月6日(現地時間)に発表された2025年上半期(1〜6月)の連結売上高は4,698億円で、前年同期比7.6%減。中国やトラベルリテール事業の低迷に加え、2019年に約6億800万ドルで買収したスキンケアブランド「ドランク エレファント(Drunk Elephant)」の大幅減収が直撃した。同ブランドの売上は上半期で57%減、第2四半期も43%減と急落している。

また、米州事業の売上は前年同期比10.1%減の514億円、コア営業損失は58億円と前年の約25億円から赤字幅が倍以上に拡大。欧州市場でもドランク エレファントの不振が続き、上半期に130万ドルの赤字を計上した。

構造改革とコスト削減

CFOの廣藤綾子(Ayako Hirofuji)は、「米国の収益性が低下しているため、構造改革を前倒しして実施しています」と説明。固定費削減や生産・調達体制の見直しを進め、2025年中に1億6,900万ドルの固定費削減を目指す。また、米国関税による最大2,000万ドルの影響を相殺し、今秋には新たなスキンケア製品を投入、2026年の米州事業黒字化を狙う。

資生堂はドランク エレファントについて、公式発表で「明確な顧客理解に基づくターゲティングの欠如」「ブランド価値の不明確さ」「革新的な差別化の不足」を課題に挙げた。2025年は在庫整理や価値創造の再明確化に取り組み、2026年には商品の強みやマーチャンダイジングを軸としたブランド再構築キャンペーンを実施する計画だ。

中核ブランドの堅調さと経営体制の変化

一方、コアブランド群は堅調に推移。「ナーズ コスメティックス(NARS Cosmetics)」は第2四半期に7%増、上期通期で2%増、「クレ ド ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」は第2四半期・上期ともに3%増を記録した。ただし、資生堂本ブランドは4%減と振るわなかった。

経営体制にも変化があった。2025年4月に米州CEOのロン・ジー(Ron Gee)が辞任し、5月にはEMEA地域会長のフランク・マリリー(Franck Marilly)も退任。現在はEMEA CEOのアルベルト・ノエ(Alberto Noé)が兼任で暫定的にEMEAを統括している。

米国市場での苦戦、経営陣の相次ぐ交代、中核ブランドの成長と不振ブランドの落差。資生堂は構造改革とブランド戦略の再構築により、2026年に成長軌道へ戻れるかが焦点となる。

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