シーイン(Shein)、香港IPO承認獲得へ向け本社を中国本土へ戻す可能性

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ウルトラ・ファストファッションのグローバル企業「シーイン(Shein)」が、香港での新規株式公開(IPO)に向けて、中国当局の承認を得やすくするために本社を中国本土へ移す方向で検討していることを米ブルームバーグが8月18日(現地時間)に、関係者の話として報じた。

シーインは現在シンガポールに本社を置いているが、中国本土に親会社を設立する可能性について弁護士と相談しているという。協議はまだ初期段階であり、必ずしも移転が実現するわけではない。同社はこれまで一貫して上場を目指す姿勢を示しており、今年3月にもドナルド・タン(Donald Tang)執行会長が「上場方針にコミットしている」と言及している。

米英での上場断念と香港へのシフト

当初、シーインはニューヨークおよびロンドンでのIPOを模索したが、いずれも規制当局の承認を得られず頓挫している。特にロンドンでの上場計画については、中国証券監督管理委員会(CSRC)の承認が得られなかったことが大きな要因となった。さらに今月には、フランスに続きイタリアでも競争当局であるイタリア競争・市場保障庁(AGCM)がグリーンウォッシング問題を理由に同社に100万ユーロの罰金を科しており、欧州市場での逆風は一段と強まっている。

そういいった背景から、現在は香港でのIPO申請を行っており、中国当局の承認がこれまで以上に重要性を増している状況である。上場が認められれば、2025年に香港で実施されるIPOの中でも最大規模になる可能性が高い。

シーインは南京で創業し、その後シンガポールに本拠を移転。しかし、同社は依然として中国の巨大なアパレル生産ネットワークに依存しているため、CSRCは実質的に「中国と深い関係を持つ企業」として同社を規制対象に含めている。CSRCは、中国法人でなくても中国と強いつながりを持つ企業が海外で上場する際、事前審査を義務づけている。

関係者によると、中国本土に親会社を設立することで、シーインの収益が中国で課税対象となり、当局の承認を得やすくなる可能性がある。また、中国政府が近年強化しているデータ規制においても、本社移転は当局の監督を強化する手段となる。2023年以降、中国は海外上場を目指す企業に対してデータセキュリティ審査を義務付けており、これも香港上場の承認要件の一つとなっている。

もし中国本土に親会社を設立すれば、現在のシンガポール本社や海外事業はすべて子会社という位置付けに変わる見通しだ。IPOに向けた最終的な判断は中国当局に委ねられており、シーインにとって香港での上場は、成長戦略の成否を左右する重大な分岐点となっている。

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